《めてみみ》東京の縫製工場の役割

2022/08/29 06:24 更新


 コロナ禍で地方出張がしにくくなった。縫製工場担当として東北などに取材に行くことが多かったが、この2年半は大幅に減ってしまった。そんなこともあり、改めて東京や関東近郊で縫製工場を探してみると、まだまだ元気な工場があるのがわかった。

 東京の有力工場の場合、新しい取り組みに挑む企業が目立った。婦人服中心のファッションしらいしでは、本社工場を大幅に改装し、自社の技術者と外部のクリエイターが一緒に試作品を開発できるようなスペースを新設する。自社企画〝お受験服〟のショップを併設するのが最大の目的ではあるが、次世代のファッション業界を見据えたインキュベーションの役割も考えている。

 カットソー主力の丸和繊維工業では、東京・両国にある本社の生産機能を拡充するため、再度設備投資する。「若く才能のあるデザイナーが世界へ羽ばたくため、工場も一緒に成長を支えられるようにしたい。地の利を生かし、服作りの〝駆け込み寺〟的な役割を担いたい」としている。

 足元では国産回帰が話題だが、人手不足や低い工賃など山積みの課題を放置したままではコロナ禍による一過性のブームで終わりかねない。そうならないためにも、作り手だけでなく、業界が一丸となって、国内工場の強みを見直し、服作りの魅力を伝えなければならないだろう。



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