《めてみみ》ゼロではない

2022/10/07 06:24 更新


 「かつての夜には戻らない」。夜とは接待や宴会のこと。ある都心SCの営業責任者が強調していた。行政による行動制限はなくなったが、社内外の多人数の会食を禁止、または自粛を推奨する企業はまだ多い。宴会に対する個々人の欲求自体も低下しているとみるからだ。

 売上高が前年比で物販ともども回復してきた飲食。しかし、19年比では物販を下回ったままのSCがほとんどだ。昼(ランチ)は盛況でも「夜の引きが早い」との声はどのSCでも聞く。先のSCは、飲食店の閉店時刻を各店に委ねており、館の正式な閉店時間通りに営業している店は今も少ない。

 物販でも「かつて」とは違う姿が残っている。都心など一等地にあるSCの空き区画は少なくなったが、「催事契約が多い」とあるSC。賃貸借契約を結んでの出店には消極的で、売り上げ歩合のみなど低コストで運営できる「催事であれば考える」企業が多いためという。もっとも、以前よりはリアルの売り場を確保したい意向がある兆しと捉える。

 一気に気温が低下し、秋になった。衣替えも進む。朝晩の通勤電車や街の人出は日増しに多くなっている。人の移動が増えれば、物販、飲食へのプラス効果が出る。少しずつでも状況が改善していくことを期待したい。出店意欲、夜の飲食ともに「需要ゼロ」ではないはずだから。



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