大阪の専門店が5月に出した東京の新店舗にお邪魔した。店が仕入れる、あるブランドのイベントを取材するためだ。銀座のメインストリートから、何本か奥に入った通り沿いの雑居ビルにその店はあった。
メンズの定番服が品揃えの主力で、店内のハンガーラックやスチール製の棚に、ゴルフブルゾンやミリタリーコート、ベイカーパンツやジーンズ、セーターやボタンダウンシャツなどが並んでいた。
週末の銀座とはいえ、店のある通りの人影はまばらだった。雑居ビルの2階にある、それほど大きくない店にどれくらい客が来るのだろうと思ったが、店にいる間、客足が途絶えることはなかった。
イベント目当ての客以外に、冬のアウターや手袋を選ぶ客やパートナーへのプレゼントを探す女性客もいて、接客中の会話から普段からリピート来店やSNSで事前に目当ての商品をチェックして来店の多いことが知れた。来店が重なっても、3人のスタッフが息の合った連係で試着や商品説明を上手にこなしていた。
好きな服や着る場面に関する質問を織り交ぜ、自然に話しかけるスタッフの姿勢に客もリラックスした様子だった。2時間ほどで8、9人が来店したが、チェーン店にはない親密な時間を味わえたからか、客のほとんどが何かしら買って帰った。路地裏の個店の底力を見た気がした。