23~24年秋冬メンズファッションウィークは、ミラノからパリへと舞台を移した。コロナ禍を経て大きく変わった男性のライフスタイルやビジネススタイルに応え、新しい美しさを提案できるかどうかが焦点だ。とりわけ、メンズファッションが世界的にカジュアルにシフトしており、テーラーリングを巡る新しいあり方が模索されている。
これまでのところ、秋冬のビッグトレンドとして浮上しているのは男性のボディーを意識したスタイルだ。デコルテやウエストを大胆に露出するスタイルがメンズにも広がっている。それは、この春夏のウィメンズのトレンド「ボディープライズ」(体への称賛)とも重なるものだ。
ボディープライズは、健康的な美しさをアピールする表現として、今の時代にふさわしくポジティブにとらえられた。性差を超えたジェンダーフルイドという考え方が広がる中で、男性だって肌を見せてもいいという発想が広がったのだろう。ただし、その結果、登場したスタイルは決してフェミニンなものではなく、むしろ男性の官能性やグラマラスなムードを強調するものとなった。
パリでは、どんな新しいファッションが提起されるだろう。ファッションは無いものねだり。今のファッションの閉塞感の中に、未来への芽がある。秋冬はそれが大きく花開きそうな予感がする。