《めてみみ》節約志向

2023/03/15 06:24 更新


 上海では3月に入って小売り関係者から、淡々とした口調で「前年同月比売り上げが2ケタ増、日によっては倍増」と聞くようになった。ただ、これはある意味当然の話。昨年3月は大々的なロックダウン(都市封鎖)が始まろうとしていた時。無事に営業できている今が上回っていないと逆に困る。問題は21年3月の売り上げを大きく下回っていることだ。

 2年前は「所得はまだ今後も上がるため購入一択」だった。ところがロックダウン以降「将来不安のため貯蓄しておく」と消費心理が一変し、ウィズコロナに転換した今も全世代でその志向が強いという。「一時的な節約なのか、早くも大都市で消費の成熟を迎えたのか。23年はそこを見極めていかないと」とアパレル関係者は眉をひそめる。

 消費の成熟というと、服の購買でよく例えられるのが「フランス人は服を10着しか持たない」といったミニマムな生活志向だ。必要最低限しか持たない、長く使う。そしてスタイルは上質で、シンプルになる。

 不要不急の服が一番影響を受けているだけかもしれないが、新車販売でも1、2月は不振打開を狙って、各社が値引き合戦を激化したという。消費の刺激策として大規模な財政出動もあると予測されているが、一般大衆の所得上昇が続く政策も中国の重要課題となっている。



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