大手百貨店の5月売上高は前年を上回り、19年実績を超えるまでの回復基調にある。ラグジュアリーブランドや宝飾品は好調を持続し、夏物のカットソートップやブラウス、寒暖差対策の薄手の羽織り物も売れた。外出機会の増加で、サングラスやアクセサリーも伸ばした。
都心百貨店では大型連休に例年通り、地方からの来店客が多かったのに加え、帰省などの土産需要が活発だった。さらにインバウンド(訪日外国人)や、自宅でゆっくり過ごす顧客による親子3世代が来店した。「コロナ禍前のにぎわいを取り戻してほっとした」(都内百貨店)との声が多かった。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5月8日から5類に移行し、従業員のマスク着用を個人の判断に委ねた。これまで従業員に着用を要請してきたが、ほとんどの店がルールを見直した。個人判断でマスクを外さない従業員は多いが、一律でなく、多様化したことを前向きにとらえたい。
ファッション消費はマインドに大きく影響される。コロナ禍で着用シーンを限定しないシンプルなデザインが広がったが、ここにきてデザイナーブランドなどの装飾性のあるクリエイションの売れ行きが良い。入店客数はコロナ禍前をまだ下回っているが、ファッションの可能性を体験できる場として百貨店の役割に期待したい。