新天地に移住し縫製業を承継した人がいる。坂戸順子社長は山梨県上野原市で縫製工場アグルカ(運営会社は井奥)を19年6月にスタートした。譲り受けた工場は前職の取引先。所在地は兵庫県だったが、承継する際に首都圏への移転を前提に物件を探した。都内はもちろん近郊でも家賃や広さなど条件が合わず、現在の場所に決まった。
新工場はJR中央本線の四方津駅から徒歩数分の立地。新宿まで電車で約80分と交通の便も悪くない。何よりもコンクリート打ちっぱなしの広い物件と自然豊かな環境に一目ぼれ。家族での移住を決め、自分たちで長年空き家だった建物をリノベーションして環境を整えた。
国内の縫製工場はコロナ下に国産回帰の流れが強まったのに加え、人手不足で生産能力が低下していることもあり、フル稼働状態が続く。アグルカでは設備や取引先を引き継いだのはもちろんだが、当時、兵庫県で働いていた従業員も山梨に移住してくれたことは大きな力となった。
立ち上げから4年が経過したが、低工賃や新人の定着など課題は山積みだという。それでも、服作りが好きな坂戸社長は「オリジナルブランドを開発してカフェを併設したショップもオープンし、消費者も訪れて作り手と交流するなど物作りを体感できるような新しいカタチの工場にしたい」と夢を語る。