《めてみみ》国民の嘆き

2023/09/14 06:24 更新


 日本のファッションブランドの進出が増えているタイでは、総選挙で親軍与党が大敗、タクシン派の「タイ貢献党」が中心となり、連立政権を樹立した。だが、〝真の民主主義〟を求めた国民の嘆きが聞こえてくる。

 1932年の立憲君主制移行後、改革派の躍進や政局混乱のたびのクーデターで、実質的に軍が政治に介入する〝タイ式〟民主主義が続いてきた。

 それに終止符を打ち、「真の民主主義の国になろう」と訴え、5月の総選挙で第1党に躍り出たのがピタ党首率いる「前進党」。王室批判を封じ込める不敬罪の緩和や徴兵制の廃止などを掲げ、国民の支持を得た。

 しかし、急進的な姿勢から反発も強く、ピタ氏は首相選出投票で敗れ、議員資格も停止された。代わって首相に就いたのが貢献党のセター・タビシン氏。敵対する親軍政党を連立政権に引き込み、首相選挙を勝ち抜いた。結局軍が政治に関わる体制が続く。

 タイの4~6月の実質GDP(国内総生産)成長率は1~3月よりも鈍化し、経済が停滞している。新政権は国民1人当たり1万バーツ(約4万1000円)のデジタル通貨の配布を打ち出したが効果はどうか。親軍政権を破り、民主主義を推進できる立場になったのだからバラまきではなく、中・長期の成長を見据えた経済対策、安定的な国の運営で成果を出して欲しい。



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