職人とは、『広辞苑』によると「手先の技術によって物を製作することを職業とする人」。訪日外国人の関心も高まってか、日本各地の様々な職人たちがメディアで紹介されることが増えた。物作りに携わる人にとってはうれしい傾向だろう。
「職人気質」の言葉もある。粗野で頑固だが、実直であるというような性格と解説されている。江戸時代から300近い国々に分かれてきた日本。このことが、地域や風土と密接に結びついた産業を日本各地に生み出してきた。もちろん繊維産業も代表の一つだ。今も合繊、デニム・ジーンズ、靴下やタオルなどの産地が名高い。
とはいえ、人手不足は深刻だ。人材の確保、特に優れた職人の技の維持・継承が急務になってきた。あるアパレル企業の社長は「これからの時代、これまでの職人という概念も変えていかなくてはいけない」とつぶやく。
「自分の技に自信を持つことは素晴らしいが、若手に教える姿勢が乏しく、自分一人で最後までやってしまう職人も時に散見される」という。傍らには、数人で知恵を出し合いながら奮闘する若者がいる。その努力は長年の職人に劣るものではない。限られた職人技の世界だけでは、繊維が産業として生き残ることはできない。粗野で頑固な人でも良いが、後進を育てていけることも、職人に欠かせない資質になってきた。