24~25年秋冬メンズファッションウィークに向かうため欧州にやってきた。同じ飛行機には業界関係者も多く、改めてコロナ禍を経て日常のビジネススケジュールに戻ったことを実感させられる。
乗り換えのためパリに到着したら、日中なのに気温はマイナス2度。SNSでつながっているパリ在住の友人が、来週は寒波が到来すると言っていたのを思い出す。今後の旅程の厳しい寒さを前に身構えていると、同乗していた業界関係者が「これくらい寒くなると服は売れますよね。日本は暖かすぎますよ」とつぶやく。寒さの到来を前にしてのポジティブな発想に、物にはいろんな見方があるなと考えさせられる。
人間は様々な自然環境に対処して、物作りを進化させてきた。飛行機の旅でも大半の人が着ているダウンジャケットも、世界的に流通するようになったのは70年代以降のこと。それまでヘビーなウールコートが主流だった冬の防寒着に、羽毛のパックを内包して軽さと暖かさを両立した。しかし現代ではそれすらも、持続可能な羽毛の供給体制やリサイクルダウンといった新たな課題に対応することが求められる。
今の地球の環境変化に向き合うことで、新たな発想が生まれてくる。今から向かう秋冬展示会でも、最新の技術を生かした服が、今の時代にふさわしい考え方をまとって登場するはずだ。