《めてみみ》過渡期

2024/01/26 06:24 更新


 24~25年秋冬欧州メンズファッションウィークを振り返ると、ファッションショーの在り方が大きく変わったことに気づかされる。デザイナーによる新しい美を提案する場から、セレブを招いてのマーケティングの場へと変わっていくブランドが増えている。もちろん、両方があっても良いのだが、マーケティングよりもクリエイションが後景に追いやられるとショーが陳腐になっていく。

 服と向き合い新しい美を模索するデザイナーのコレクションを見ると、「ちゃんとしてるな」と思わずつぶやいてしまう。これまでだったら、当たり前のようにどのブランドもそんなショーをしていた。それほどクリエイションに向き合うブランドが減っている。

 ビッグブランドのショーよりも、若手デザイナーの展示会やプレゼンテーションの方が服への情熱を感じることができる時代なのかもしれない。ミラノでプレゼンテーションをした「セッチュウ」のコレクションには、デザイナーの桑田悟史の物作りへの情熱とプロダクトクオリティーを上げようとする姿勢を感じることができた。パリの「サルバム」からは、お祭り騒ぎのランウェーから距離をとって、着る人になじむ服を作ろうとする藤田哲平の意図を感じることができた。

 服の作り方と見せ方はこの先、どう変わっていくのだろう。コレクションは過渡期にある。



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