金融市場が株高で沸いている。バブル期の89年12月29日に記録した日経平均株価の史上最高値を2月下旬に更新し、以降も3万9000円前後の高値圏で推移する。
日経平均は、東京証券取引所プライム市場のなかから225銘柄を選定した日本の代表的な株価指標だ。構成銘柄にはトヨタ自動車、日立、ソフトバンクグループ、任天堂など日本を代表する企業が名を連ねる。アパレル専業だとファーストリテイリング1社だが、繊維ファッション関連で見ると百貨店4社、イオンなど総合小売業、合繊の東レ、帝人、化学カテゴリーで旭化成、クラレが指定されている。
銘柄は毎年数社ずつ入れ替えられ、16年には楽天、昨年はメルカリと新興企業が加わる一方、外れる企業もある。産業構造が変化するのは当然とはいえ、前の最高値当時は紡績など老舗繊維メーカーが数多く入っていたことを思うと、一抹の寂しさを覚える。
足元の株高に戻ろう。34年ぶりの高値と聞くと、日本経済は〝失われた30年〟からいよいよ脱却する時が来たかと期待したくなるが、多くの国民は収入よりも物価高が上回り、好景気という実感はない。本紙では年初から「価値組宣言!」のタイトルで繊維・ファッション産業の価値向上にスポットを当てている。地に足のついた商いで好循環を作っていけるか、ここからが正念場だ。