コロナ下で一気に拡大したECは、経済活動の再開が進んだことで、各社・ブランドの特性に合わせてリアル店舗との融合を見直し、活用するフェーズに移った。SNSの反応にいち早く対応できる生産管理や、オンラインとオフラインの両面からのファンづくりなど、多くの課題に対応できる組織体制作りをどのように進めたらいいのか。アルページュ、タビオ、ビームスのEC・DX担当者が、各社の強みを生かすデジタル戦略について話し合った。
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《出席者》
- アルページュ専務執行役員 野口英男氏
- タビオ代表取締役社長 越智勝寛氏
- ビームス執行役員DX推進室室長兼オペレーション本部マーケティング部 矢嶋正明氏
デジタル戦略の重点
――現在のEC売り上げは。
野口 EC化率は、会社の売り上げの約半分を占めています。ECの中でも実店舗とネットを組み合わせたO2O(ネットと店舗の相互送客)に注力しています。コロナ下で会社の利益構造を変えるため、EC化率とO2Oの売り上げを伸ばそうと取り組んでいます。
私はECを統括しています。約10年前に自社EC「アルページュストーリー」を立ち上げ、7年ほど前から同名の店舗を展開し、OMO(オンラインとオフラインの融合)も行っています。
越智 20年の下期ごろからEC展開に本格的に着手しました。デジタルの統括役員がおらず、当時会長だった故越智直正氏から「お前がやれ」と言われて始めました。2年前からSNSを活用するようになり、売り上げがかなり伸びたので、組織体制も少しずつ変えていっています。
以前はリアル店舗中心の企業でしたが、昨年1月からEC戦略を思い切って進めています。直近のEC化率は15%ほどで目標の20%には届きませんが、昨年夏ごろからリアル店舗が活発になり、売り上げも増えた影響もあると見ています。
矢嶋 コロナ禍で瞬間的に40%まで上がったEC化率は、リアル店舗にお客様が戻ってきた現状、30%台前半になっています。EC事業は05年から始まり、私は当時から責任者でした。21年に組織改編し、ECとリアル店舗を統合して販売の機能に特化した部門ができたことで、私は全社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を統括する役割に変更になりました。
もはやデジタルやECを単独で行う段階ではない。足りないものは無いか、ECやリアル店舗にかかわらず利用するお客様との関係作りをどうするかという視点で、業務をしています。データの分析、コミュニティーの運営、メタバース(インターネット上の仮想空間)も含む新規事業の立ち上げなどに対応しています。
――EC事業やデジタル活用で重視しているのは。