《新人店長のVMD物語》⑤伝わってる?そのPOP

2017/04/23 02:00 更新


12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。

前回、POP(店頭広告)を使えば、見るだけでは分からない素材の機能などをお客に伝えられると学んだ麻紀でした。でも麻紀が作ったPOP、何やら問題があるようです__。

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売り場の商品もすっかり春物に入れ替わり、暖かい日も増えてきた。南城百貨店は3月からの1年間、「お客様が毎週足を運びたくなるような、新鮮で魅力的なライフスタイルを提案する」を全館共通のテーマとして取り組むことになった。商品の魅力を接客なしでもある程度伝わるようにするために、「おすすめの商品をPOPで訴求するように」と、各ショップに通達が流れてきていた。

現在ルクリアでは、「スプリングコート特集」というPOP(店頭広告)を設置しており、説明文は次の様になっている。


『春の通勤用としてトレンチコートとステンカラーコートを、そして旅行用のトラベルコートをおすすめします。トレンチとは塹壕(ざんごう)のことで、第一次世界大戦で兵士を守るコートとして活躍し、深い打ち合わせのダブルブレストやスリーブストラップは雨や水の浸入を防ぎます。

ステンカラーコートはコンテンポラリーなセットインスリーブをご用意しました。

しわを簡単に伸ばせて小さくたためるトラベルコートもございます。』

大谷マネージャーが、これを見て立ち止まった。


「お疲れ様です」麻紀が話しかけた。

「お疲れ様。このPOPを全部読み切るのは苦痛だと思わないかい? 字が小さくてとても読む気がしないよ。200字くらいありそうだ」

大谷マネージャーは麻紀にPOPを昨を作る際のポイントを話し始めた。


「人が1カ所に目を向ける時間は短いんだ。その一瞬でお知らせできなければ伝わらないと考えるべきだ。短い時間に読んでもらえる文字数には限界がある。このPOPにはたくさんの情報が書かれているね。伝えたいことがたくさんあるのはわかるが、もっと絞るべきなんだ。そうすると文字数が減って字が大きくなるから読みやすくなる」

大谷マネージャーは続けた。

「読んでもらえるのは15秒足らずと考えて、タイトルは簡潔に。そして確実に読んでもらえる説明文は30~40文字だと覚えておくといい。あともう一つ。ここに『コンテンポラリーなセットインスリーブ』とあるけれど、これは誰にでも理解できる言葉かな?」


「最近、雑誌で見かけたので使ってみました」

「何となくわかるお客様もいらっしゃるだろう。でも、見たお客様のほとんどが理解できるようじゃないと、POPの意味がないんだよ」

タイトルも説明文も業界人にしか通用しない専門用語や、わかりにくい英語は使わないほうがいい、とのことだった。接客がなくても購入の後押しをするのがPOPの役割なのだ。

POPは読んでもらい、内容が伝わってはじめて意味がある。伝えるためには、分かりやすい言葉で簡潔にまとめることが必要である。

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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。

(繊研新聞2013年の販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)



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