《寄稿》パタゴニアが50年かけて学んだこと ヴィンセント・スタンリー

2024/03/18 06:29 更新有料会員限定


カリフォルニア州ベンチュラにあるパタゴニアのザ・フォージで協力して問題解決にあたる社員(写真提供=ティム・デイビス)

 パタゴニアから書籍『レスポンシブル・カンパニーの未来 パタゴニアが50年かけて学んだこと』(ダイヤモンド社)が1月31日に発売されました。日本語版の発行を記念し、パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードさんと本書を共著した、ヴィンセント・スタンリーさんに〝日本のアパレル業界で働く皆さんへのメッセージ〟をいただきました。前著『レスポンシブル・カンパニー』から11年、責任ある企業はどのように行動すべきか。経済的な大変革を乗り越え、生態系破綻(はたん)への流れを遅らせるために、企業と人は何ができるか。「文化と気候の混乱の時代」に、ヴィンセントさんはパタゴニアでの50年の経験を生かし、すべての企業経営者とリーダーに対してビジネスを再考するよう呼びかけます。

 本書では、パタゴニアがその仕事を徐々に責任あるものへ変え、失敗を通じて自信を獲得しながら、最終的にはウォルマートのような大企業から街角の小さな企業までが「同じことをするよう」にできた経緯を詳しく語っています。そして、あらゆる企業が取り組むことができる具体的で実践的な手順と、何をどのような順序で行うべきかについてのアドバイスを示しています。環境経営の先駆けとして知られるパタゴニアが50年にわたって試行錯誤を続け、築き上げた考え方と行動指針、チェックリストのすべて。ヴィンセントさんとパタゴニアからのメッセージをお届けします。

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最も大切な権利は、責任を負う権利である

有意義な仕事とは何だろうか

 数十年前、パタゴニアの展示会ブースを担当していた私は、日本のバイヤーがラックに並べられた各スタイルをじっくりと吟味する様子に感嘆した。ほとんどのアメリカ人客は、まるでハエをたたくかのようにものすごいスピードでラックの間を駆け抜け、1枚1枚のシャツをじっくり見ることはほとんどない。日本のバイヤーは、柄、色、質感など、目だけでなく手も使ってすべてを吟味する。縫い目をそっと引っ張って、縫製の良しあしを確かめるのだ。

 私たちはかつて、このような日本人のクオリティーに対する関心が世界中に広まることを願っていたが、それはかなわなかった。いまや衣服は耐久性を失い、スタイルはより刹那(せつな)的になっている。ファッションブランドは、数週間で時代遅れになるような服を店頭にあふれさせる。小売店ではシーズンに入ってすぐに大幅な値引きが行われ、その値引き幅はますます大きくなり、卸売り在庫を焼却して最新のファッションのためのスペースを確保するケースも増えている。

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