3日目はメンズを主軸とするブランドのショーも相次いだ。
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渋谷・道玄坂のクラブに巨大な和太鼓が浮かび上がる。打ち手のしなやかな筋肉によるバチさばきとともに、腹まで響く振動が会場を揺らす。日本のルーツとの共通点を感じさせる演出で、コウザブロウ(赤坂公三郎)とランドロードニューヨーク(川西遼平)によるジョイントショーは始まった。
それはやんちゃな人たちの頂上決戦のようなストーリー。特攻服に描かれるような文字の刺繍と構築的なテーラーリング、スプラッター映画の返り血のようなアクションペイントのストリートスタイル、両ブランドともデザインは異なれど思い切り不穏な空気をはらんでいる。
不穏な空気の男性像をモードの中に取り込むという手法は、これまでも何度か見たことがある。かつての「ヨウジヤマモト」しかり、数年前の「ヴェットモン」しかり。それは世の中の男性にとって、悪い男の放つオーラのようなものが魅力的に見えることがあるからかもしれない。今回の不穏な男性像は、ニューヨークをベースにする二人の渋谷・道玄坂という場所へのオマージュなのかもしれない。


京都をベースにするレインメーカー(渡部宏一、岸隆太朗)は、春夏もジャポニズムのエッセンスを感じさせながら、端正なテーラーリングスタイルを軸にした。薄く軽やかなスーツやコートが軽やかな印象。テーラードカラーのスーツでさえ、時にパンツの中にタックインして着る。ロングシャツをレイヤードのようにして着るスタイルや共地のオーバーベルトを付けたシャツアウターもきっちりとした印象。
キモノコートや鯉(こい)口のようなノーカラーシャツ、絞りのセットアップでジャポニズムをほんのりとにじませて、80年代風のツータックパンツやボクシーなテーラードジャケットとミックスしていく。音楽家や竹工芸、染物師らとコラボレートしたコレクション。
ノブユキ・マツイ(松井信之)のプレゼンテーション会場には、シャツやデニムがパッチワークされた敷物にガラスの水滴がつるされている。そのガラスのオブジェがときおりぶつかって奏でられる音を背景にして新作を見せた。上に着たアイテムを曲線的にカットして、下のアイテムをのぞかせるレイヤードのようなルックが春夏の特徴。水が流れるような曲線のカットによるレイヤード、水が流れる柄のプリント、コートのボタンも氷のような透明のガラスを飾る。
レイヤードは時折、インサイドアウトのようにも見えてくる。テーマは「水鏡」。廃棄処分されるはずだった服をパッチワークした床も含めて、コンセプチュアルな見せ方は、このブランドの良いところ。ショーのストーリー展開がさらに充実してくると、もっと面白くなる。

(小笠原拓郎、写真=加茂ヒロユキ)
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