大手セレクト企業 培ったブランド力で新規ビジネスへ

2017/10/09 04:50 更新


 大手セレクトショップが、自店のブランド力をテコにファッションとは少し離れた分野で新たなビジネスを始めようとしている。ユニフォーム事業に乗り出したり、異業種と組んで客層を広げたりするところも目立つ。狙いは、既存の店舗運営だけでは掘り起こせない、潜在顧客を掘り起こすことにある。

(柏木均之)

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士気向上で新たな需要

 老舗セレクトでこの間増えているのがユニフォーム事業だ。ユナイテッドアローズは昨年から専業メーカーと組んで法人向けユニフォームの販売を開始。ビームスは学校制服の専用レーベルに続き、今秋から医療用レーベルもスタートした。シップスも専任部署を設け、今春からユニフォーム事業に着手した。

 「御三家」が相次ぎユニフォーム事業に乗り出した背景には、顧客がセレクトに求めるものが変化していったことが背景にある。ビームスは、80年代後半に始めた大学サークル向けがユニフォーム事業の出発点。卒業生が社会人になって企業向け、彼らが親世代になると、その子供の制服と扱い分野が広がった。

 ユナイテッドアローズも事業規模が拡大するにつれ、ホテルや飲食業からの制服製作依頼が舞い込むようになった。一時は自社の小売り店頭だけでオーダーを受けていた時期もあったが、依頼が次第に増えたため、専業メーカーと組んで需要をしっかり捉え、事業化すべきと判断した。

ユナイテッドアローズによるスカイマークの制服。従業員からデザインを公募するなど現場の声を形にした

 ユニフォームは「お仕着せ」の服だが、最近は機能性や丈夫さのほか、従業員の士気を上げる効果も企業が求めるようになっている。例えば、シップスが静岡県の道の駅向けに納入したユニフォームはサイクリングでの利用者が多い場所を考え、サイクリングジャケットのディテールを取り入れたデザインだ。

 同社はユニフォームに求められるものが「必要最低限の機能を優先する場合と、職場のモチベーションアップにつながる着心地やディテールの工夫が欲しい場合に二極化している」と見る。専業メーカーでは手の回らないファッション性を付与することで、従業員のやる気を高めるツールとして、新たなユニフォーム需要が取れると各社は考えている。


愛好家結び新規客つかむ

 ベイクルーズグループの「ジャーナルスタンダード」は自動車の「ジープ」と協業している。アメリカンカジュアルを軸にしたファッションを売る店としてスタートし、今年で20年目。店舗数を増やしてきたが、こだわりの強いアメカジを愛好する客層は減っている。

 一方のジープもSUVとして販売台数を伸ばしているが、さらに日本市場でシェア拡大を狙っていた。ファッションと車で商品分野は異なるが、アメリカが原点という共通項がある。互いの顧客やファンを結びつける取り組みを行えば、相互に新規客開拓が出来ると考えた。

「ジャーナルスタンダード」は同じアメリカの「匂い」をブランド価値とする自動車メーカーと組み、ファン層の拡大を狙う

 ウェアや家具、食品などの協業商品で取り組みをスタートし、ジープのディーラーショールームにジャーナルスタンダードの商品を置くことも計画。ジャーナルスタンダードプロデュースの限定車も作る考えだ。2ブランド共通のコミュニティーサイトも設け、協業内容の発信も行っている。

 セレクトショップ各社は、既存の小売業やブランドでは捉えきれないファッションへのニーズを捉えることで90年代から00年代にかけて成長を遂げてきた。ただ、主力客の年齢は30代後半~40代に差し掛かり、高齢化が進む。10~20代の消費者層におけるセレクトショップの認知度や利用度合いも低下している。

 「御三家」は、ユニフォーム事業によるビジネスによる収益だけでなく、それを着用したことがきっかけで自社のファンが増えることを副次効果として期待する。ジャーナルスタンダードも、既存の店舗運営の延長線上だけでは届かない場所にいる潜在顧客を、同じマニアックな嗜好(しこう)を持つ商品分野と組むことで再発見し、取り込もうとしている



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