「展示会からはじまる、ファッションビジネスの未来化」を謳うターミナル(東京)が提供するサービス「ターミナル」は、BtoB(企業間取引)のECプラットフォーム。2014年から、その名の通り、展示会業務のデジタル化を進めてきたが、コロナ禍によるオンライン展示会ニーズの高まりもあって追い風が吹いている。
ユーザーにとっては今ではなくてはならないサービスになっており、実際、解約率はコロナ前の半分以下にまで低下しているという。「(コロナ禍は)事業にとってネガティブな要素はない」と伊奈亮輔代表取締役。展示会業務のデジタル化をきっかけに、その前後の業務のデジタル化も進め、バズワードで終わらせない本質的なデジタルシフトを顧客に促している。伊奈氏に話を聞いた。
■サービスの解約率、半分以下に
―サービスを始めたきっかけは。
元々、オンライン展示会の会社ではありません。14年から本格的に始めた事業は、SKUが多いのにも関わらず、展示会での受発注が紙(ラインシート)に書いたものでやり取りされていたのをデジタル化しましょうよ、と始めたものです。
手書きだとミスも起こり得ますし、受注側も計算ミスもあり得ますからね。業務を効率化することで人的リソースを浮かせ、本来の仕事に注力しませんか、というのが当初から伝えていることです。
サービス提供先は、ユナイテッドアローズなどのセレクトショップや地方の有力専門店などからスタートしましたが、ここ1年では大手アパレルや栗原などアパレル以外のファッション系、ミセスやいわゆる老舗と言われる企業が増えました。
APCジャパンやラコステ・ジャパンなど海外ブランドの日本法人や代理店も増えていて、サービス開始から累計で約600ブランドに使ってもらってきました。
―コロナ前と後で変わったことは。
コロナ禍による急速な企業業績の悪化で、当初は解約の増加などを懸念しましたが、むしろ解約数は半分に減りました。
コロナ前は2.6%ほどだった年間の平均解約率が20年には1.8%、今年の着地見込みが0.7%弱です。デジタル化による効率化のメリットが改めて評価され定着したようです。月額2万円からという価格感も受け入れられたのではないでしょうか。
例えば、展示会の付帯業務のデジタル化に始まり、1〜2年かけて次に受注システムと連携する、みたいなイメージ。利用が浸透していけばいくほど顧客側で新たな要件が出てくるので、それに合わせてステージがあがっていくことが多いです。部分最適から全体最適に向かうということです。
かつてベンダーさんが顧客向けにカスタマイズしたシステムを数千万円かけて構築して納品する時代がありましたが、今は間尺に合わないですね。
■バイヤーのUIを改善
―機能も拡張している。
コロナ禍での活用促進を考えた時に必要になったのがバイヤー側の機能拡張です。
これまでは有料課金しているブランド側の使い勝手の良さをメインに考えていましたが、費用が発生しないバイヤー側に気の利いた機能があって、やり取りが活発になった方がプラットフォームとしてはいいと考えたからです。
今後の重い課題はBtoBの決済です。もう数年も検討はしていますが、お金のやり取りを絡めていければまた新しい価値を提供できるようになるのですが、ここはまだハードルは高いですね。
―DX(デジタルトランスフォーメーション)がホットワードになってきた。
DXという言葉が一人歩きしていますが、本質的には「誰がやってもいい業務」なのか、「自分たちがやらなきゃいけない業務」なのかを分けた上で考えるべきものです。
誰がやってもいいことはデジタルに背負わせればいい。DXをしたい、と言った時に「何がしたい」が明確にならないと上手くいかないでしょうね。
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