トウキョウベースは新卒初任給を40万円に引き上げた。10万円の上げ幅だけでなく、80時間分の固定残業代が含まれることも話題となった。初任給引き上げと固定残業代について谷正人CEO(最高経営責任者)が語った内容を改めて紹介し、優秀な人材の確保・育成のために何が必要と考えているのかを見る。
(本社編集部=柏木均之)
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無駄な残業は減らす
3月26日の24年1月期決算説明会で谷CEOに質問した際のやり取りは以下の通りだ。
―初任給を40万円に引き上げた理由は。
谷CEO 日本一の企業になるためには日本一の給与水準にするべきということ。出店立地を東京、名古屋、大阪の都市部に絞り、ある程度単価の高い商品の販売ができる体制が整備できた。(給与水準を引き上げても)費用対効果が見込めるビジネスモデルになってきた。
海外では物価上昇と円安でむしろ給与が目減りしてしまう国もある。今後、米国にも出店するし、給与は可能な限り世界水準の適正値にするべきと考えている。
―引き上げ発表後の反応は。
発表から2週間くらいで新卒採用の応募エントリーが去年の2~2.5倍くらい増えた。中途採用の応募者数は新卒より人数が少ない分、6~7倍増えた。
―40万円には80時間分の固定残業代が含まれる。
事実だが、そもそも月80時間も残業はできない。毎日終電になってしまう。固定費にすると無駄な残業は減る。そういう狙いだ。今回に限らず当社では無駄な残業はどんどん減っていく傾向にある。
―80時間という数字の反響は。
社内に気にする人はいない。実際の販売スタッフの平均残業時間は10~20時間、デザイナーなど本社のクリエイティブ業務で多くなったときでも40時間だ。当社は成果主義が大前提。残業代で稼ごうという人は採用していない。
当社の店舗は固定什器だ。売り場替えのとき、什器の移動や入れ替えをしなくて済む。販売員の残業の要因の1つが売り場替えだが、誰でも簡単に作れる売り場設計にして、その分の時間を接客に使って欲しいと考えている。
優秀な販売員が欲しい
初任給を引き上げたのは、日本でトップになるために不可欠で、世界水準にも合わせる必要があるから。人件費が増えても高単価商品の販売に適した都心部に店舗を集中しているので、収益性は維持できるし、採用の応募が増えるなどの効果も出ている。
固定残業代を80時間分に設定したのは無駄な残業を減らすのが主眼で、実際の販売員の残業時間は業界平均に収まっている。接客に集中できるよう、店舗での付帯業務を減らす取り組みにも力を入れている。
以上が谷CEOの発言の要旨だ。初任給引き上げはファッション業界で注目を集め、固定残業代の長さは物議を醸した。40万円と80時間という2つの数字にはトウキョウベースがどんな人材を求めているか社内外に明確に伝える意図がある。