【PR】東レ 中期経営課題 「プロジェクトAP-G 2025」が2年目へ —価値創出やサステイナビリティーで世界に貢献—

2024/03/19 00:00 更新


 東レは23〜25年度の3カ年で進行中の中期経営課題「プロジェクトAP-G 2025」の初年度をまもなく終える。世界経済の停滞が続く中で出だしの業績はややスロースタートとなったが、価値創出力の強化やサステイナビリティー(持続可能性)商品の事業拡大など、掲げたテーマを着実に前進させている。2年目はこれをさらに加速し、最終の25年度に向けた成長を目指す。

環境配慮型素材を拡大 グローバルサプライチェーンの競争力もさらに


 2030年を展望した長期ビジョンで、繊維事業は「繊維商品を通じて新たな価値を提供し、世界の人を豊かに」することを目指す。ここへの重要なステップとなる中期経営課題「AP-G 2025」では、サステイナビリティー(持続可能性)推進への基盤を強化するとともに、商品の付加価値を高め、グローバルでの成長を追求する。

 具体的な繊維の成長戦略として掲げるのは、①価値創出力強化による収益力向上、②環境配慮型素材を活用した高感性・高機能商品による成長領域での事業拡大、③競争力強化の三つ。

 価値創出の一例が人工皮革事業だ。日本製の「ウルトラスエード」、イタリア製の「アルカンターラ」の二つでグローバルなブランド戦略を強化し、すみ分けつつ互いに成長を継続している。特に自動車内装分野で支持され、上質な車室空間を演出する素材として欠かせない存在になっている。ビーガン志向など天然皮革代替のニーズも高まり、環境配慮のEV(電気自動車)の急速な伸びも成長を後押しする。

 独自技術を生かした価値創出力強化も進める。中でも複合紡糸技術「ナノデザイン」は、ナノレベルでの原糸設計を可能とする画期的な技術で、これまでになかった高感性・高機能な商品作りに貢献。ここ数年で新たな商品開発を相次いで実現している。23年度はユニクロの「パウダーソフトダウンジャケット」でナノデザイン素材が採用され、商品や店頭でもナノデザインの技術ブランドを訴求した。

 環境配慮では、ポリエステルやナイロンで従来の石油由来からバイオマス由来で製造した「エコディア」シリーズを強化、同じくリサイクルで製造したポリエステルやナイロンの「&+」(アンドプラス)シリーズを広げ、50年のカーボンニュートラル実現へ向けた取り組みを着実に進める。

 競争力強化は、快適ストレッチ素材「プライムフレックス」や防水透湿素材「ダーミザクス」といった商品力の強みを背景にしたグローバルブランド戦略をさらに強化する。また、あらゆる素材を、糸わた・テキスタイル・縫製品といったサプライチェーンをつないで最適な形で提供するビジネスをグローバルに展開する、世界唯一の“3次元事業展開”を強みとする。特に中国、東南アジア、南アジアといったアジアで一貫生産体制を構築しており、こうしたグローバルサプライチェーンをさらに拡充していく。


《INTERVIEW》 グローバルサプライチェーンで 日本の産地と連携も

 中期経営課題「AP-G 2025」で繊維は最終25年度に売上収益1兆300億円、事業利益640億円を目指す。1年目の進捗について、三木憲一郎専務執行役員繊維事業本部長に聞いた。

専務執行役員繊維事業本部長 三木 憲一郎 氏

 中期経営課題初年度は売上が前期をやや下回りますが、高付加価値品の販売増や価格転嫁の進展で利益はプラスの見通しです。販売面は欧州や中国の景気が停滞し、衣料関連も影響を受けました。一方で資材関連は自動車生産の回復でエアバッグや内装材の需要が戻っていますし、EV(電気自動車)の販売増も追い風になっています。

 中期の重点テーマとしてサステイナブル(持続可能な)関連に力を入れていますが、単にエコというだけでは海外メーカとの差別化も難しくなっています。「&+」のような高度なリサイクルの強みを生かした高付加価値品や、考えに共感してもらえる先との取り組みを強めたい。

 グローバルサプライチェーンの深化では、新しい生産拠点及び消費市場としてインドに注目しています。エアバッグ基布やスパンボンドで先行しましたが、客先の地産地消ニーズも対応し、衣料でも拠点化していきたいと考えています。グローバルサプライチェーンにおいては、日本の産地の存在が重要です。量を増やすのは難しいですが、とがったものを一緒に開発し、海外で量を拡大するような呼びかけもしていきます。

繊維事業の成長戦略

①価値創出力強化 複合紡糸技術「ナノデザイン」 高付加価値テキスタイル開発

 東レ独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」を活用したテキスタイルの開発が進んでいる。3成分といった複合が可能で、これを組み合わせてナノレベルの繊維断面を設計することで、従来になかった機能性や感性を実現する画期的な技術だ。


 昨年末に開発したばかりのファッション素材「デューエイト」は、環境に配慮した非フッ素撥水剤を用いながらナノデザインによって、これまでの非フッ素では難しかった水滴の転がり性を実現し、雨の日の水はねによる細かな水滴などもきれいに処理する。

 同素材の特殊糸はマルチフィラメントの芯に太い糸、その周りに細い糸を配置した設計で、どちらも異収縮2成分のバイメタル構造によって大きな捲縮と微細捲縮を複合する。これによるハスの葉構造で空気の層が生まれ、角度のない状態でも優れた撥水性が出せた。25年春夏向けに販売開始し、レディス・メンズファッションへ訴求する。


②環境配慮型素材 バイオマス100%ナイロン「エコディアN510」 用途開拓を進める

 環境に配慮した素材開発も進んでいる。100%植物由来のナイロン繊維エコディアN510は、セバシン酸(植物:ヒマ)とペンタメチレンジアミン(植物:トウモロコシ)を重合・紡糸してつくる。


 エコディアN510は、100%植物由来ナイロンでありながら、融点が高く、優れた寸法安定性がある。また、従来の石油由来のナイロン6と同等の強度と耐熱性をも兼ね備えている。石油由来から植物由来に置き換えることでGHG(温室効果ガス)排出削減につながり、カーボンニュートラルにも貢献する。東レは、2022年の事業化開始以降、サステイナビリティーの取り組みを進めるため、エコディアN510の新たな用途開拓を探求してきた。

 その結果、エコディアN510はファッション衣料や資材用途でも採用が進み、実際にエコディアN510が使われた各種商品の店頭での販売がスタートしている。社会が企業に求める様々な要請や持続的な社会の実現への意識は一層高まっており、今後、環境に配慮した素材の用途の広がりや販売数量の拡大を見込む。


③競争力強化 防水透湿素材「ダーミザクス」 機能と環境配慮を両立 グローバルに支持

 スポーツ、アウトドアウェアから街着まで幅広く使われる防水透湿素材では、東レの「ダーミザクス」が世界的に注目されている。欧米でのPFAS(有機フッ素化合物)規制が強まるなか、高い機能と環境配慮を両立した素材開発に力を入れ、リブランディングもうまくはまった。

 防水透湿素材は、ナイロンやポリエステルの表地と、防水透湿性を付与する膜(メンブレン)の2層構造や、これに裏地をつけた3層構造が使われる。ダーミザクスのリブランディングを契機に、従来のポリウレタン膜以外にも開発を広げ、多様なニーズに応えた素材ラインナップを拡充している。

 リブランドでは防水性をとことん追求した「プロテクト」、防水・透湿・ストレッチ性といった機能を併せ持つ「バランスド」、衣服内の蒸れを解消する通気性に焦点を当てた「ブレス」の三つのサブブランドを設けた。

 プロテクトで新たに開発した環境配慮タイプは、ポリウレタン多孔膜の耐水性キープに使われる撥水剤を非フッ素に置き換え、耐水圧2万ミリ以上の高い機能と環境特性を両立。このほか、表地・膜・裏地ともにポリエステルで統一した、リサイクルに適したタイプなども開発し、グローバルに拡販している。


お問い合わせ先

東レ株式会社
URL:https://www.toray.co.jp

企画・制作=繊研新聞社業務局



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