日本の物作りの危うさ(坪内隆夫)

2014/05/03 12:25 更新


4月24日に日本でのドメスティック向けの自社展を最後に、私のお手伝いしている日本のメンズブランドのAW2014展示会がすべて終わりました。1月7日にPITTI UOMOが始まった事を考えると、一番はじめの展示会から実に3ヶ月半もたった事になります。海外の展示会の時期が早いのか、日本の展示会が遅いのか...

 


AY PROJECTミラノショールーム


私の海外でやっている日本ブランドの販売促進企画JAY PROJECTも5回目が終わり、かなりバイヤーの方にもJAY PROJECTブランドを覚えてもらったと思います。私はヨーロッパに来てからもうかなり長いので、色々な業界の事情を知っているつもりでも、実際に日本のブランドを中心に販売してみると、はじめに考えていたよりもやり方を変えないと行けない事もありました。

しかし、どちらかというとヨーロッパでの販売よりも、日本での物作りの部分で思っていたより違っていた事が多かったです。日本の物作りはこれまでどこの国よりも優れ、デリバリー等のサービス面でもすばらしかったと思いますし、それについては海外の人も良く知っており、日本のブランドを信頼しています。

一方、最近では中国の製品もかなりクオリティーが上がり、日本では以前ほどMADE IN CHINAに対する悪いイメージは無いと思いますが、ヨーロッパではまだまだ今だにほとんどの人がMADE IN CHINA=悪いクオリティーだと思っています。

海外での販売ではお金を回収するのが大変なので、先ずオーダーコンフォメーションをした時点で30%、残りの70%はデリバリー前にすべて前支払い、ヨーロッパではメーカーがエージントに委託した場合、ほとんど60日後もしくは30日後での支払いになります。

特にヨーロッパは今経済的な大きな問題を抱え、60日後に支払いしてくれない所も結構あります。また、商品の価格も日本から輸入する為に送料及び関税がかかり、かなり高く販売する事になります。日本で販売する上代の倍近くになってしまいます。消費税は日本でも最近上がりましたが、イタリアは22%ですよ!という事は、それだけ日本の商品に魅力があるという事です。

MADE IN JAPANで日本からインポートするとどうしても値段は高くなり、前払いにもなるけれど、日本のブランドは感覚的にも品質もデリバリーも抜群で、そこはヨーロッパのお店は安心しています。値段や支払い条件的なデメリットをクオリティー及びサービスの部分でカバーするという事で日本のブランドは確実に入金する事が出来、販路も増やす事が出来ます。

ただ、ここ最近の日本のブランドさんからの話を聞いてみると、中国で物作りをしていた所がコストやロット等の問題でまた日本での生産にシフトしている所が増えてきて、工場の枠取り等で日本での物作りも大変になってきていて、納期ずれや、ドロップする商品もかなり多くなっているという事を耳にするようになってきました。

ここ何年か日本の製造業では工場の経営者も未来にあまり明るい希望を持っていないらしく、人も入れず、労働者も年齢が行った人が多く、若物もあまり工場で働かなくなったり、ミシン等機械の投資もされず、生産面でかなり大きな問題を抱えているとの事...

これからは日本から海外に進出するメーカーも絶対に増えてきます。ただ、これまでの日本の優れていた物作りの部分が以前よりもレベルが低くなってきているのも確かです。今なんとかしていかないと今後海外からの信用も無くなって来ると思うのですが...頑張れ日本!

Ciao!



坪内隆夫 つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。2004年2月から2007年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、2012年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する。



この記事に関連する記事