バニッシュ・スタンダードは、スタッフDX(デジタルトランスフォーメーション)のアプリケーションサービス「スタッフスタート」の機能をさらに向上させる。人を生かすAI(人工知能)技術の開発の一環。データ・AI分野の研究・開発・商用化を主導してきた西川仁氏が8月にAI開発責任者に就任。今後、同サービス経由の年間流通総額1500億円のデータを基に、スタッフの新しい魅力を引き出し、消費者に最適な情報を提供する。「単なるオンライン接客ではなく、その人を生かす新たなEX(従業員体験)ツールを構築」(小野里寧晃社長)する。
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同サービスはコーディネート投稿をベースにオンライン接客を拡大し、店舗スタッフの役割を広げて地位を向上させてきた。一方、新しい接客方法はスタッフ個人の知識やモチベーションの依存が高く、教育制度が整っていない企業もあり、成果のばらつきが課題だった。これに対し、今までの販売・投稿データを基に、AIを活用した店舗スタッフのサポート機能を開発する。例えば、投稿を増やす機能は、商品紹介のキーワードやコメントそのものを生成・推薦し、自分なりにアレンジして投稿ができるようにする。自分でも気が付かない、最適な言葉が選べるなど、作成を簡便にし、魅力的な投稿を増やせる。
また、消費者には、自分に合ったスタッフを数多くの中から選べるマッチング機能を提供する。AI導入前のレコメンドのテストでは流通総額が約5倍に伸びた実績もあり、マッチングの重要性は高い。地域も超えて最適なスタッフを探し出すのは至難で、AIを活用する。販売員のファンが増えると、来店・集客が高まることも検証されており、実店舗の売り上げ向上も期待できる。
西川氏は「AIは効率化、省人化で語られることが多く、違和感があった。スタッフスタートは人を生かすツールであり、AIによって磨きをかけて販売員の活動に貢献したい」という。小野里社長は「ブランド軸、企業軸に加え、業界軸でもデータ分析・活用ができる。膨大な過去データを持つ当社だからこそ、産業に向けて未来の発展ツールを提供したい」考えだ。
西川氏はNTTメディアインテリジェンス研究所で基礎研究から応用、実用化まで従事。東京工業大学情報理工学院での人工知能研究・教育や、AI研究開発スタートアップなどを経て同社に入社した。言語処理学会最優秀論文賞、情報処理学会論文誌ジャーナル特選論文などを受賞している。