《視点》本音論

2018/06/13 05:55 更新


 「本音と建て前を使い分ける」とはよく言うが、最近はどうも建て前に重点が行き過ぎるあまり、事態の停滞や悪化を招く場面を、政治や学校経営に絡むニュースでよく見かける。危機管理という面では、建て前より本音が優先されるべきだと実証しているかのようだ。

 他者との関係で摩擦をなくすため、つらいことや言いたいことを隠して接する建て前は、社会が生んだ知恵であり、防衛本能のようでもある。だが強い忖度(そんたく)のあまり、事実をねじ曲げるような建て前は、しょせんはうそにしか過ぎず、悪い結果を生むことが多くなるだろう。

 胸襟を開くとは本音をさらけ出すこととも言える。信頼を築くには、本音で語り合える関係であるかどうかが問われる。

 苦戦が続く卸型アパレルメーカーと専門店の座談会では、専門店側から「メーカーとの関係が希薄になっている」との指摘があった。業界の発展のためには、もっと両者間の協力が必要となる。そのためにも本音を示すことがカギとなる。建て前が阻害する場面はもう見飽きた。

(樹)




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