22年度の最低賃金引き上げの目安が31円に決まった。中央最低賃金審議会の小委員会の議論は異例の8月にずれこみながらも、この間では最大の上げ幅となった。
毎年この時期、労使の委員の議論が白熱するが、今年は引き上げ自体は一致していた。時給で働く非正規労働者が増え、最賃あるいはその近傍で働く層も少なくない。それによる購買力の低下や社会の持続可能性の毀損(きそん)は、賃金を支払う側としても看過できなかったというのは当然だ。そして、目下のところだけでなくさらに激しさを増すことが見込まれる物価高騰への対応が求められたことが水準を押し上げた。
ただ過去最大の引き上げといっても新たな全国平均となる961円で1日8時間、25日働いても月に19万2200円。6200円増えても額面20万円にも満たない。低賃金労働の広がりによる課題の解決にはつながらないから、ここで歩みは止めるべきではないだろう。
しかし、さらに進めるには時給上昇の価格転嫁を阻害する下請け構造の改善などが求められ、ほとんど手つかずになっている東京と地方の格差是正も欠かせない。この時期だけの議論では済まない気がする。
(光)