《視点》安い日本

2022/08/12 06:24 更新


 久しぶりの欧州出張は、物価高と円安を肌で感じる機会となった。食料、電気代、ガソリン代のどれをとっても、欧州の物価上昇率は日本を大きく上回る。

 パリ在住の日本人に聞くと、特に外食の値上がりが著しいそうだ。元々高い印象だったが、見本市会場にあるごくカジュアルな食堂のワンプレートランチで、1人3000円近く取られた時は仰天した。2年半前に訪れた時は、2000円前後だったはず。もっとも、日本では1000円以下で済みそうな内容だ。相対的な物価の安さから「安い日本」と言われるのもうなづける。

 欧州のテキスタイルも、エネルギーや原料価格の高騰を受けて値上がりしている。見本市に出展したメーカーに前年比を尋ねると「4~15%」(仏ジャカード織物)、「10%」(仏プリント)、「10~15%」(伊丸編み)、「23%」(伊毛織物)と2ケタアップが大勢だった。

 日本国内のテキスタイル商談で「1メートル当たり10、20円の値上げも渋られる」という声をよく聞いてきただけに、価格が通るのか心配したが、世界市場では杞憂(きゆう)だった。多くで「受け入れられている」という。

 一方で、日本にも多数顧客を持つ伊織物メーカーから「中国も韓国ものんでくれたのに、日本だけはだめだった」と返ってきた。安い日本をここでも実感することになった。

(侑)



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