《視点》きしめん愛

2022/08/17 06:23 更新


 よその人からは、名古屋人は毎日きしめんを食べていると思われているが、そんなことはない。きしめんへの愛はあっても、常食にはしていない。

 理由はきしめんを食べるという選択肢が狭まったこと。きしめん専門店を見かけなくなったし、スーパーの冷食コーナーではうどんに浸食されて肩身が狭そうだ。名古屋に生まれながらきしめんを食べて育ったという若者は減っている。

 そんなきしめんを救うため、名古屋のきしめん専門店「星が丘製麺所」の店主が立ち上がった。透明なだしに幅広のめんが泳ぎ、輪切りされたすだちがさわやかに彩る人気メニューの「太門」は、伝統的なきしめんの見せ方、食べ方と一線を画す。店内で販売する店のTシャツや帽子は、買って着替えてインスタに上げる人が続出するほど映える。店をのぞくと中高年ではなく若者であふれている。外装にも内装にも工夫を凝らし、名古屋人のDNAに刷り込まれているきしめん愛を見事に顕在化した。

 次は全国展開だ。省スペース、省人で出店できる立ち食いきしめんの新業態を「ズズズ」と名付け、立ち上げた。まずは全国の人にきしめんを食べてもらい、魅力を知ってもらうこと。「山ちゃん」が手羽先で、「コメダ」がモーニングで全国を制覇したように、きしめんで全国をズズズとのみ込めるかに注目だ。

(原)



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