《視点》一箱の棚

2023/08/24 06:23 更新


 静岡県の民営図書館が20年に始めた「一箱本棚オーナー制度」が広がっている。1区画の棚を有料で借り、棚のオーナーとして自由に自分の蔵書を並べるシステム。記者の住む愛知県にも少し前に民営図書館ができた。全国で増えたのは、公共空間をつくるコンセプトへの共感のほか、お金を払ってでも蔵書を貸し出したいというニーズがあるということだ。

 棚を借りたい人のほとんどは「自己表現」の場として使っている。SNSが発達し、簡単に発信できる時代だが、あえて棚に本を並べて発信する。メディアは棚、メッセージはそこに並べる本。棚を通じた新しいコミュニケーション方法だ。

 ある専門店の若手社員はファッション系ユーチューバーの熱意に打たれ、服に目覚めた。すぐに自身も動画で発信を始めた。「こんなにかっこいい服があるんだって伝えたい」。

 メディアが変われば伝わる相手も、伝わる内容も変わる。読書人口が減るなか、現状打破の一手となった「一箱の棚」。動画もその一つだが、よりファッション業界に特化した新たな「一箱の棚」も見てみたい。

(桃)



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