店舗とECサイト、それぞれの役割が変化している。これまでは客が来店したときにどう体験価値を残すかが勝負所だったが、現在は「店舗に来ていただく前と後の接点が大事」とジュンの中嶋賢治取締役執行役員は話す。顧客作りは今や店舗だけの使命ではない。同社は店舗と連携した充実のコンテンツで、ファンを拡大している。
●体験価値を高める様々な施策
この間、様々なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきた。その一つが、店舗で長く接客経験を積んだ販売のスペシャリストによるチャット接客だ。店舗で培ったスキルを生かし、客の悩みや要望にチャットで応えるというもの。店頭での接客と変わらないやりとりで、解決へ導いている。「店頭と同じ接客をしてもらえてうれしい」と好評で、1日に約120件の問い合わせが届くことも。家族の転勤や子育てとの両立、体調面などに悩み、「やむを得ず現場を離れなければならないが、販売が好き」といった、いろいろな背景を持つメンバーが活躍している。
客の代わりに在庫のある店舗を探し、そこからダイレクトに商品を発送する「ラクトリ」サービスの依頼もチャットで受け付けている。できる限り少ない在庫で売り上げを上げるために、店舗の在庫を一元化して在庫のある店舗から直接商品を発送する仕組みなど、在庫の偏在を解消することにも取り組んできた。これらすべてに共通しているのは、「体験価値を高める」思いと客に不便を感じさせない配慮だ。
●イメージしやすいように
ECでは購買行動の変化に合わせて、より商品ページの情報を充実させた。コロナ下でオンラインが浸透し、店舗とECを行き来しながら情報を取ったり、購入したりすることが定着したことで、「事前にどのような発信をし、来てくれた客にはどれだけ情報を持って帰ってもらうかが重要になっている」。
そこでよりイメージが膨らみやすいように、ビジュアルマーケティングプラットフォームのvisumoのサービスで各商品ページに動画を投入。裏地の仕様や素材にクローズアップした画像の後ろに、着用した際の生地のなびき方や繊細な質感が伝わる10~15秒程度の動画を加えた。22年秋冬物から採用し、「選びやすくなった」との声が多い。
もっとも、こうした動画ツールを導入するには、ささげ(撮影・採寸・原稿作成)業務のスタッフが取り組みやすい手軽さも必須だ。同社は自社スタジオでモデル撮影をする際に、合間を縫ってスピーディーに行えることを重視した。そのため、スマートフォンで撮影し、そのまま更新できるサイクルを構築。「画質のいいカメラもあるが結局、容量が重くなり、サイトスピードが落ちる。サーバー費用もかさむ。そうなると量産ができない」との思いにvisumoが応えた。同社ではブランドを横断して撮影から編集までノウハウを共有するプラットフォームも設けており、全員が滞りなくスマートフォン1台で行っている。
●店舗スタッフのフォローがあってこそ
顧客作りは店舗での接客だけでなく、そうした商品情報を来店前後に渡せているか、そのヒントを担保できているかが欠かせなくなっている。店舗でも来店したからといって、どの客も試着から購入までする時間があるとは限らない。したがって、家に帰ってから再びサイトを見返してもらえるように、帰り際に二次元コードを読み込んでもらう一押しも大切だ。店舗スタッフの仕事は必然的に増えてしまうが、中嶋取締役執行役員自ら店舗に足を運び、丁寧なコミュニケーションを重ねてフォローしている。
店舗で自分が気に入るものを一から探すのは大変だが、コロナ下を経て、改めて店舗で物を見る、試着する楽しみが再認識されている。中嶋取締役執行役員は「それが今戻ってきているなかで、店舗体験をより充実したものにするためにも前後の接点が大事」と強調する。体験価値を高めるための施策は手を緩めず、1月にはECでの試着予約、店舗受け取りサービスをそれぞれリリースする。
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