ユイマ・ナカザトは21年春夏オートクチュールを映像作品で発表した。「ATLAS」と題したコレクションは、これからの時代を象徴するミューズとして足を失ったモデルのローレン・ワッサーを迎え、オンライン上での対話からインスピレーションを受けて作った。
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新作はユイマ・ナカザトらしい様々な最先端のテクノロジーを駆使している。そして出来上がった服は、まるでフィギュアが身にまとうような造形的なフォルム。バイオテクノロジーによって作られた人工合成たんぱく質素材に、特殊なデジタル加工を施すことで人の手だけでは作り得ない高度に複雑な造形と身体情報が布に記憶されるという。しかし、その物作りの仕組みは映像と説明だけでは難解で理解しづらい。
人工合成たんぱく質素材は微生物による発酵によりつくられるため、原料を石油や動物に頼らないサステイナブル(持続可能)でエシカル(倫理的)な新素材。それを自然をモチーフとした有機的なフォルムに仕立てている。また、今シーズンはぼろもアイデアの一つになっている。寒さに耐えるために古布でその劣化した部分を修復しながら、何世代も1着の着物を着続ける。修復に使われる古布は様々な地域から集まり、人から人に受け継がれる。そんなぼろの精神をインスピレーションにしている。
劣化した部分のみを交換し、長く使い続けることができ、また特別な技術がなくても、誰でも服を作る事が可能だという新しい物作りをアピールした。
(小笠原拓郎)