19年春夏NYコレ 中堅ブランド返り咲きで期待高まる

2018/09/11 06:28 更新


 【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子】19年春夏レディスコレクションがニューヨークを皮切りにスタートした。ここ数シーズン、注目ブランドの減少でニューヨークはメディアやバイヤーの来場者が減少していたが、今回は中堅ブランドがいくつかニューヨークに返り咲いたこともあって期待が高まっている。「ラルフローレン」が50周年記念のショーを開催したこともあり、序盤からジャーナリストの来場者数は例年よりも多い。

 トム・フォードは今シーズン、なぜファッションデザイナーになりたかったのかと自身の価値観を振り返った。「男性にも女性にもより美しいと感じ、自信をもってもらいたかった。より高くスリムに見せる服が、美しくすてきに見える」という信念を再認識したコレクション。それは時に、楽で心地よい服や靴を求めるトレンドや包括性を重視する風潮に逆行する。それでも、自分が信じる美意識のストレートな発信を貫くことに、ファッションデザイナーの存在意義がある。トム・フォードは、その信念をコレクションを通じて発信したかったのだろう。キーアイテムは、フェイククロコダイルで仕立てたかっちりしたジャケットと、裾から繊細なレースをのぞかせた膝下丈のタイトスカート。インナーはデリケートなレースのトップ。ウエストをマークしたシャープな縦長シルエットに、官能的なランジェリーのニュアンスを加えてみせた。

トム・フォード

 たくさんの色とフルイドラインを特徴とするシース・マルジャンは、珍しく白のトータルスタイルでスタートした。そこからイエローやグリーン、ブルー、赤、オレンジへと色が広がっていく。色とともに特徴的なのは、ベルトやバックル、カーゴポケットなどの機能的なディテール。テーラードジャケットはショルダーからベルトでつるされた帯のような布がバックに揺れる。ストライプのミニドレスは細いベルトでウエストをマーク、カーゴパンツはポケットから細いひもを垂らしてアクセントに。素材で目立つのは、ペーパータッチやしわ加工。サテンのような光沢の生地にしわ加工している。水彩画のようなトーンで描いた街並みの柄を、トップやパンツにプリントした。そのあたりの淡い色合いにマルジャンらしさはあるのだが、ユーティリティーの要素が加わったせいかちょっと重くなってしまった。

シース・マルジャン

 ジェレミー・スコットはモトクロスの凛々(りり)しさ、グランジのリラックス感、コミックの遊びをミックスして、いつものように楽しいコレクションを組み立てた。モデルはリップをギラギラ光らせたちょっと怖いメイク。膝から下をプロテクターで覆ったカラフルなブーツは、強くて楽しいムードのキーアイテムだ。強気なイメージの女の子にだらんとしたスウェットシャツを着せたり、コミックの吹き出しに見られる言葉を蛍光色でアップリケしたりして、いろいろな表情を重ねていく。靴はスタッカートとのコラボレーションも。

ジェレミー・スコット

 トリー・バーチは今シーズン、少しマニッシュになった。父親が好んだカスタムメイドのシャツに着想したためで、シャツカラーとスタンドカラーのドレスが多い。旅行好きだった両親に思いをはせながらレース、ミラー、フリンジ、クロシェ、刺繍、タッセルといったフォークロアのディテールを加えていく。足元はスニーカーでリラックスムード。

トリー・バーチ
トリー・バーチ

 ケイト・スペードニューヨークは、「グッチ」と「マイケル・コース」で経験を積んだニコラ・グラスがクリエイティブディレクターに就任して初めてのシーズン。ブランドの原点に立ち返るかのように、スペードのモチーフをさりげなく散りばめた。ジオメトリックな花柄のプリント、ジャカード、編み込みセーターも多い。長いボウカラー、フリル、ギャザー、リボン、パフスリーブ、ラッフルスリーブといったクラシックなガーリーディテールも健在だ。

ケイト・スペードニューヨーク

(写真=catwalking.com、ランディ・ブルック)

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