【3~8月連結】海外コンビニで伸びるセブン&アイHD イオンは多様な事業ポートフォリオが奏功

2022/10/07 13:06 更新


 セブン&アイ・ホールディングス(HD)とイオンの3~8月連結決算は、いずれも増収増益となった。コロナ禍の長期化と消費者の意識の変化に対応し、急速に進むインフレの下で消費者を捉え、高騰する水道光熱費などをしのぎ、サステイナビリティー(持続可能性)への取り組みも進めた。しかし、海外のコンビニエンスストア事業の拡大で通期見通しを上方修正したセブン&アイHDと、多様な業種を揃える事業ポートフォリオが功を奏したイオンで、それぞれのあり方を示している。GMS(総合小売業)はイトーヨーカ堂、イオンリテールとも赤字に終わった。ただ、イオンリテールはこの間の効率化が実を結びつつあり、ヨーカ堂は構造改革にメドをつけるタイミングにあることから、回復はネットスーパーの成長戦略などが本格化する23年度を待つことになりそうだ。

円安がプラスに

 セブン&アイHDの営業収益は前年度までの会計基準でも前年同期比64.0%増。米国での買収により海外コンビニ事業が規模を拡大したことが大きく、円安に振れた為替も押し上げた。国内コンビニ事業も増収となったが、スーパーストア事業は前基準でみても減収となっている。

 営業利益は584億円を積み増した海外コンビニ事業の押し上げ効果が大きかった。国内コンビニ事業も33億円の増益となった。国内コンビニ事業の営業利益は1267億円で、海外コンビニ事業は1155億円となり、この二つで利益のほとんどを稼ぎ出している。百貨店・専門店事業はそごう・西武の回復などによって収益を82億円改善、4億円の黒字に転換した。スーパーストア事業は67億円の減益だった。グループ全体で為替変動が利益を145億円押し上げており、水道光熱費の増加分139億円を相殺したこともあって収益性を高めた。

 イトーヨーカ堂は、これまでに改装した店舗の押し上げ効果でSC合計の既存店売り上げは1.2%増となったが、不採算店を順次閉店しており、前年度までの会計基準でみても0.1%の減収となった。部門別では主力の食品がコロナ下での需要増の反動が出て既存店売り上げが3.3%減となったが、衣料品などのライフスタイルは0.4%増と外出需要の回復などを捉えてプラスに転じた。全店ベースのライフスタイルの売り上げは1076億3100万円(1.7%減)だった。

 粗利益率は食品の0.1ポイント低下はあったが、ライフスタイルが0.5ポイント改善の33.1%となり、商品計では0.1ポイント改善の29.0%とした。しかし、商品売り上げの比率が下がっていることもあり、粗利益総額でみれば低下しており、水道光熱費が急騰して販売・管理費が0.9%上昇、前年同期の10億7100万円の黒字から赤字に転じた。

在庫圧縮で効率化

 イオンの営業収益は前年度までの会計基準ではさらに863億円プラスになる。全体の3分の1余りを占めるGMS事業は減収となったが、サービス・専門店事業、ディベロッパー事業などで補って増収とした。

 営業利益も3分の1を占める総合金融事業は減益となったが、4分の1ずつのディベロッパー事業とヘルス&ウエルネス事業が増益となり、GMS事業が37億円の赤字ながら123億円の収益改善を果たして増益となった。

 イオンリテールは東北事業の移管で減収となったが、既存店売り上げは0.9%増だった。旅行向けのほか40代向けレディスカジュアル「エシーム」などが好調だったことから衣料品は5.2%増だった。

 粗利益率でも在庫圧縮の進んだ衣料品の貢献があり、全体では0.4ポイント改善した。水道光熱費が42億円増加したが、デジタル活用などの効率化で販管費をコントロールして、赤字ながら、前年同期の185億円から幅を縮め、通期の黒字が見込める推移という。

 セブン&アイHDは好業績を受けて、第1四半期(3~5月)に続いて、23年2月期見通しを上方修正した。米国でガソリン販売の規模・収益とも拡大が見込める海外コンビニ事業の押し上げを想定、円安の効果もあり、営業収益で1兆2330億円、営業利益で320億円上方修正した。ただ国内は水道光熱費の高騰が続くと見込まれることからコンビニ事業も営業利益の修正は行わず、スーパーストア事業、百貨店・専門店事業は下方修正となっている。ヨーカ堂は通期見通しを営業利益で30億円下方修正することになった。下期も海外コンビニ事業で伸ばした上期と同様の動向を見込んだものだ。

 ヨーカ堂は構造改革完遂の年として、店舗閉鎖などにメドをつけることになるが、収益の本格的な回復は23年度以降になる。成長戦略として掲げるネットスーパーのセンターが23年度から順次稼働、セブン‐イレブン・ジャパンのアプリ会員1800万人へのアプローチが始まる。非食品は面積の適正化を進めつつ、この間の改装で成果を出しているものの水平展開を本格化する。

 価格への意識を高める一方でコロナ前の生活を取り戻そうとする2面性を持つ消費者に向けて、イオンは下期、プロモーションやイベントを積極的に仕掛ける。これにより事業ポートフォリオの中で伸び悩む分野を中心に、客数の獲得に力を注ぐ構えだ。

 さらに価格優位性などが浸透しつつあるPBの開発を強化、グループとしての差別化につなげる。DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化やヘルス&ウエルネス事業の拡大などを含めて中期経営計画で掲げている戦略を推進する。



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