日本の研究開発費は、今でも世界で4番目の規模を誇る。もっとも、投資効率ではOECD(経済協力開発機構)平均を大きく下回る。研究技術に投資しても、多くは実際の製品やサービスには生かせず企業内に死蔵しているということを意味する。新規事業の多くは社内の理解が得られずしぼみ、優秀な人材は去る。なぜ、そうなるのか。大手企業出身でそれぞれ起業した二人にその背景とイノベーション実装の可能性について語ってもらった。二人が語る「中年ベンチャーが日本を救う」、その意味とは。
(聞き手=永松浩介)
- 顧客時間共同CEO、オイシックス・ラ・大地COCO 奥谷孝司さん
- ムーンレイカーズ・テクノロジーズ社長 西田誠さん
「答え」より「態度」
――奥谷さんは15年に良品計画を離れた。
奥谷 44歳で退職し、自分が実践で培ったマーケティングの知見をアカデミックな場で生かそうと考えました。「無印」の看板を外し、個の力で出来る事に時間を使ってみたかったんです。
同時に、オイシックス(当時)に参画、副業が可能だったので17年に個人会社を作り、18年には大広との共同出資で顧客時間を設立しました。業務の傍ら、大学院で学びも続けていました。独立して企業の支援をさせてもらうとニーズがあるんだなと感じました。
――西田さんは、グループ会社で新規事業を手掛け、経済産業省が促す「出向起業」という仕組みで東レからスピンアウトした。
西田 東レのグループ会社で「ムーンレイカーズ」というプロジェクトを動かしていました。親会社とは異なる消費者直結のビジネスで、東レの素材の優秀さと自分が培った総合的なプロデュース力で消費者の支持を集めることが出来ました。
それでも、グループ内にとどまる限りはやれる事には限界があるため、独立することにしました。今も東レとの関係を維持しながらも自由度高く事業運営しています。
――50代からのベンチャーを勧めている。
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