ユニセックスのルームウェアDtoC(メーカー直販)ブランド「アルセ」(ウォンゲット、東京、吉澤壮弥代表取締役CEO=最高経営責任者)は、商品開発から生産、物流を通じ、環境問題や、国内縫製工場の縮小などファッション産業が抱える課題と向き合う。今後はリサイクル素材の活用や、リペアサービスなども行い、循環型ファッションの実現を目指す。
(関麻生衣)
同ブランドは20年11月にクラウドファンディングのマクアケでスタートした。「家で過ごす〝インドアライフ〟の充実は心身の健康にもつながる」との思いが原点。ルームウェアは家でリラックスできる着心地と、近所の外出にも対応するスタイリッシュなデザインが売りだ。
おうち時間は平等
「家で快適に過ごす時間は誰にでも平等にあり、そこに性差はない」と、コンビネゾンを除き、全てジェンダーフリーで着られる。中心価格帯は1万円台。奈良県産の靴下もあり、税込み3850円。
素材は綿や麻などの天然素材を使う。環境負荷の軽減のため、梱包(こんぽう)材は最小限に抑えつつ、FSC(森林管理協議会)認証の紙製パッケージを採用。保管用のビニール袋にもサトウキビ由来のバイオプラスチックを使用し、二酸化炭素の排出量削減に取り組んでいる。
国内産地の活性化の一環として、服は全て山形県の縫製工場で生産している。同工場は高い技術が必要な女性用下着の縫製が得意。安定した品質で、耐久性もあり、長く着用してもらうことで過剰生産と大量廃棄の抑制にもつなげる。工場の選定の際には、実際に足を運び、労働環境も審査した。
現在、販路は公式ECのほか、4月からアーバンリサーチにも卸している。滑り出しは順調で、昨年のデビュー時に全9型、計約800万円にあたる在庫を仕込み、5月末時点でほぼ80%を消化した。このため、一時販売を中断し、8月28日~9月12日まで開催している渋谷パルコの期間限定店に合わせて在庫を追加、オープンと同時にECも再開した。
「インドア」にこだわる
直近1年の課題は顧客認知の拡大。ブランドイメージを表現できる期間限定店をシーズンに1~2回開いていきたい考えだ。
中長期的には三つの目標がある。一つは「インドアライフにこだわる」とのブランド哲学を消費者に伝え、共感を広げること。定期的に公式インスタグラムで行っているフォロワーへの部屋着に関するアンケートを今後も続け、コミュニケーションの頻度と質を高めつつ、商品企画や改良にも役立てる。
二つ目に循環型ファッションの確立だ。特に注目するのは素材で、天然素材に加え、リサイクル素材も取り入れる。トレーサビリティー(履歴管理)を徹底するため、国内産地と協業したオリジナル生地を活用した商品も作りたいとする。
三つ目に生活雑貨の販売も予定している。「サステイナビリティー(持続可能性)をうたう以上、服の買い替えを積極的に推奨できない」(松本裕司取締役COO=最高執行責任者)が、ブランドを継続するためには顧客接点を増やし、維持する必要がある。そこで、日用品としての生活雑貨を販売し、タッチポイントを広げる。
顧客接点の創出においては、自社ブランドの服のリペアやクリーニングのサービスをサブスクリプション(定額利用)型で提供することも視野に入れている。