「ファッションとは何か」を問い直す(社会人類学者、EVOKE81共同代表 小野瀬慶子)

2024/05/21 13:00 更新有料会員限定


『フィッティングルーム 〈わたし〉とファッションの社会的世界』(アダチプレス)ではオートエスノグラフィーとして43の光景を描いた

 「〈ファッション〉じゃない服」という言葉が発せられる時、ファッションとは一体何を指すのだろうか。この言説の背後に、埋め込まれたファッションの知の前提が浮かび上がる。私たちがファッションについて考える際に、無意識の前提があり、現在の「〈ファッション〉とは何か」はその前提上にあることを問題提起したい。

物語を見る目

 ファッションは、「経済的価値の獲得」と、「新しい」「美しい」を主な基準としたデザイナー個人の才能による「クリエイションの優劣」に条件づけられる領域として発展してきた。ファッション産業は、新たな商品を絶え間なく送り出すことにより、「消費を刺激し、短期的な経済利益を生み出す物語」へとファッションを作り変え、繁栄を享受してきた。今なお、この物語はグローバルな規模で支配的であり、そのスピードは加速している。

 くわえて、知の前提として指摘したいのは、物事を「物象化・合理化する近代的な知」だ。この知は、支配的な産業構造の中に埋め込まれ、人間や自然を物として合理的に扱い、管理・統制してきた。これらは、加速する経済利益の物語の中で狂気へとなっていく。

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