イオン、セブン&アイ・ホールディングスはそれぞれ基本方針や宣言を掲げ、流通のリーディングカンパニーとして、2050年をターゲットに環境保全や持続可能な社会を目指した取り組みを進めている。社会的な要請が強まるもと問題意識を高めており、取り組みをブラッシュアップ、アピールしながら目標達成を目指している。
イオングループ 事業戦略にグリーントランスフォーメーション導入
SCで脱炭素先行
イオングループは「事業戦略そのものにGX、グリーントランスフォーメーションを導入」(吉田昭夫イオン社長)する。同グループは内外で30年にわたり累計で1200万本を超える植樹活動を行っており、この間では「サステナビリティ基本方針」や「環境指針」を掲げて、脱炭素社会の実現や資源循環の促進に取り組んできた。環境保全、持続可能な社会への要請がより強まるもと、10月初め、改めて〝GX〟として事業戦略そのものに組み込んで追求する姿勢を示した。
すでに二酸化炭素排出削減では「イオン脱炭素ビジョン2050」の取り組みが進んでいる。SCと大型店で先行して30年までに店舗が年間で使用する電力71億キロワット(20年度)の50%で実現する中間目標を7月に示しており、さらに50年までとしていた店舗が排出する二酸化炭素をゼロにする目標を40年に前倒しすることも想定している。
SCと大型店の取り組みは、イオンモールでは国内の155施設で25年度までに使用電力を100%再生エネルギーに転換することにしており、150近いイオンタウン、300近いイオンリテールのGMS「イオン」「イオンスタイル」でも30年度には達成することを見込んでいる。
そのため第3者所有のPPAモデルも含めて太陽光発電パネル設置を広げるほか、卒FIT電力買い取り、再エネ直接契約などを進める。6月に開業したイオンモール川口では東京電力の「非FIT非化石証書付電力メニュー」で実質、電力の二酸化炭素排出量をゼロにしており、さらに東京ガスの「カーボンニュートラル都市ガス」の供給を受けて、空調に使用するガスも二酸化炭素の排出がゼロになっている。
イオングループではSC、GMSで先行、そのエリアでの条件を整えた上で食品スーパーやドラッグストアなどに広げる。
またGXのもとで商品・物流の分野でも脱炭素の取り組みが広がりそうだ。自社の直接排出が対象になる「スコープ1」、電力使用の「スコープ2」での取り組みを踏まえ、事業活動に関連する他社の排出に関する「スコープ3」の取り組みを本格化することが示されている。PB「トップバリュ」の食品、ヘルス&ビューティーケアなどの商品で製造委託先へのアンケートや要望のヒアリングが始まっており、サプライチェーンを対象にした削減計画の具体化につなげることにしている。
GXについて「突っ込んだ議論をしている」としており、環境保全の取り組みが加速する見通しだ。
セブン&アイグループ 3R推進月間で多様に
初の衣料品回収も
セブン&アイグループは環境省が定める3R(リデュース、リユース、リサイクル)推進月間、食品ロス削減月間の10月、グループ各社は多様な取り組みを行っている。15日には専用サイトを立ち上げ、〝もったいないをなくそう〟というメッセージとともに発信を強めている。
具体的な取り組みとしては、イトーヨーカ堂、そごう・西武などが家庭で使い切れない未使用食品を集めて寄付する〝フードドライブ〟、セブン&アイ・フードシステムズが環境配慮型の容器を用意、都内の「デニーズ」100店で実施している食べきれなかった料理を持ち帰る〝モッテコ〟などがある。
この中でヨーカ堂では10月1~24日、初の取り組みとして全国の108店で衣料品の店頭回収を行った。肌着、靴下、レザー、ダウンなどを除く衣料品を持ち込んでもらうもので、1点につき10%割引のクーポン券を発行するキャンペーンとして実施、買い替えを促すが、家庭にある衣料の廃棄に抵抗感を高める消費者に応える。伊藤忠商事と再生ポリエステル「レニュー」で協業するもので、回収したポリエステル100%の衣料品についてはリサイクルの道がたどれる。その他についても資源として再利用されるという。併せて、傘のリサイクルキャンペーンも実施した。
セブン&アイグループは19年5月の環境宣言「グリーンチャレンジ2050」に基づいた活動を進めている。10月の〝もったいないをなくそう〟の打ち出しは四つの目標を掲げた宣言の一つ、食品ロス・食品リサイクル対策(50年目標=食品廃棄物量75%削減など)の一環。このほか、二酸化炭素排出量削減(店舗からの排出実質ゼロ)、持続可能な調達(PBの食品原材料は持続可能性が担保されたもの100%)といった宣言で示された目標を目指す取り組みが続く。
プラスチック対策(PB容器は環境配慮型素材100%など)ではすでにペットボトル回収が年3億3000万本になっており、それを再生した素材の使用が機能インナー「ボディヒーター」などで広がっている。
(繊研新聞本紙21年10月27日付)