【ファッションとサステイナビリティー】11月に開業する麻布台ヒルズ 使用電力全てを再生可能エネルギーに

2023/09/26 05:30 更新


緑化面積約2万4000平方メートルを確保(イメージ)

 環境負荷低減などサステイナビリティー(持続可能性)を重視した商業施設の開発が相次いでいる。森ビルが東京・港区に11月24日に開業する大型複合施設「麻布台ヒルズ」はその一つ。「グリーン&ウェルネス」を施設全体のコンセプトとし、緑の充実や使用電力全てを再生可能エネルギーにするなど環境に配慮した施設だ。商業ゾーンのテナントもファッションを含め、全体のコンセプトに沿った店舗を導入する。

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 サステイナビリティーへの取り組みは商業施設にとって必須となっており、多くのディベロッパーが施設作りと運営で対応を強化している。消費者の関心が高まっているとともに、「環境に配慮した施設かどうかなどを出店や入居の条件にするテナント企業が外資を中心に増えている」(大手ディベロッパー)のが大きな背景だ。

 森ビルも六本木ヒルズをはじめとした大型複合施設で、緑化や再エネの活用を軸に取り組みを強化してきた。「ヒルズの進化形」である麻布台ヒルズはその集大成で、同社として初の取り組みも多い。

 国際的なイニシアティブ「RE100」に対応し、同社施設では初めて、オフィス、商業店舗、住宅、イベント施設など全ての完工時からの使用電力を再エネにした。併せて、来街者用の駐車場には急速充電器を設置、CO2(二酸化炭素)を排出しない電気自動車の利用を促進する。さらに同社として初めて、未利用で、再生可能な下水熱を施設全体の熱源の一部に活用する。「年間約70トンのCO2排出量削減に貢献する」という。敷地内に降った雨水や住宅の雑排水も再利用する。

 廃棄物の資源循環にも取り組む。商業ゾーンを含むテナント、分別ごとの廃棄物量を可視化するウェブシステムを初めて導入し、廃棄物の総量削減を目指す。飲料メーカーと連携し、六本木ヒルズで実証実験したペットボトルの「ボトルtoボトル」リサイクルを本格導入する。また、施設内にウォーターサーバーを設置する計画だ。

 「圧倒的な緑も創出」する。建物の低層部の屋上を含む敷地全体を緑化し、緑化面積を約2万4000平方メートルとした。約320種類の植物を配し、果樹園や菜園も設ける。「街のシンボル」として、緑化した約6000平方メートルの中央広場を設ける。こうした取り組みが評価され、国際環境性能認証「LEED」「WELL」の最高ランクの認証を取得する予定だ。

 こうした施設作りは商業ゾーンにも反映させる。中央広場にはイベントスペース「麻布台ヒルズアリーナ」を設け、「人々の交流や憩いの場」とし、隣接する芝生エリアにはパブリックアートを点在させる。広場周辺の路面には「エルメス」、コスメ「オフィシーヌ・ユニヴェウセル・ビュリー」、「カルティエ」、クリスタル製品「サンルイ」、「セリーヌ」、時計・ジュエリー「タイムヴァレー」の日本1号店、「ディオール」「ブルガリ」「ベルルッティ」「ボッテガ・ヴェネタ」を配置、緑の空間と一体化した海外ラグジュアリーブランドゾーンを作る。いずれも、来年2月から順次オープンする。セリーヌは1~2階に出店する。

 商業ゾーンは店舗面積約2万3000平方メートルで、約150店が出店する。麻布台エリアは外国人を含めて高所得者層が多く住み、麻布台ヒルズにも高級レジデンスや高級ホテルが入る。そのため、ラグジュアリーブランドを含めた高額品を扱うファッション・雑貨店や『ミシュランガイド』で星を獲得したシェフが手掛ける高級飲食店などが多く出店するが、「新たな来街者を含め、多様な人々を対象にしており、幅広い価格帯の店舗を揃えた」(池澤直樹営業本部商業施設事業部商業運営部商業運営1部麻布台ヒルズ商業運営室室長)。ただし、コンセプトは統一し、ラグジュアリーブランドなどのファッションを含め、「環境や健康に配慮し人間らしい豊かさを提案する、グリーン&ウェルネスという街(施設)全体のコンセプトに共鳴してもらったテナントを誘致した。各テナントで、SDGs(持続可能な開発目標)への対応を含め、コンセプトを具現化した店を目指す」という。

 ユナイテッドアローズが出す「ユナイテッドアローズウィメンズストア」はドレスなどのほか、スポーツウェアなどのウェルネス商品やフェムテック商品も扱う新コンセプト店にする。レディス「ルフィル」は「旬の植物で彩り、自然とともに暮らす心地良さを感じる」店を作る予定だ。

 麻布台エリアには飲食店は多いものの、ファッションを含む物販店が多く入る商業施設がない。麻布台ヒルズによるサステイナビリティーの発信が新しい市場の創出につながるのか注目される。

■麻布台ヒルズ

 高層ビル3棟と四つのエリアで構成する大型複合施設。敷地面積約6万3900平方メートル、延べ床面積約86万1700平方メートル。商業施設やデジタルアートミュージアムなどの文化施設のほか、約21万4500平方メートルのオフィス、約1400戸の住宅、高級ホテル「ジャヌ東京」、慶応大学予防医療センター、インターナショナルスクールなどが入る。

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(繊研新聞本紙23年9月26日付)

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