【ファッションとサステイナビリティー】経済産業省産業技術環境局資源循環経済課課長 羽田由美子さん 資源循環への創意工夫促したい

2022/06/16 05:29 更新


経済産業省産業技術環境局資源循環経済課・羽田由美子課長

 今年4月、プラスチック資源循環促進法が施行された。プラスチック製品の設計から廃棄物の処理までの各段階で、3R+リニューアブルを促すための法律だ。プラスチックは私たちの日常生活はもちろん、あらゆる企業の事業活動にも欠かせない有限の資源。だからこそ無駄を減らし、有効利用を心がける意識改革が求められる。同法に基づくプラスチックとの新しい付き合い方を経済産業省に聞いた。

特定プラ使用製品

 19年5月に3R+リニューアブルが基本原則の「プラスチック資源循環戦略」を策定、その戦略の具体化に向けた第一歩として、20年7月にレジ袋有料化をスタート。そして今春にプラスチック資源循環促進法が施行された――という状況です。

プラスチック資源循環促進法は、製品の設計から廃棄物の処理までの各段階でプラスチックの資源循環などの取組み(3R+リニューアブル)を促進するために制定された

 同法についてメディアでよく話題になる〝特定プラスチック使用製品〟は、該当する12品目とそれらを提供する小売り、サービス事業者が指定され、該当製品の使用合理化が求められています。12品目には衣類用ハンガーと衣類用カバーなどが含まれ、提供事業者は総合スーパー、百貨店など各種商品小売業(無店舗含む)や、クリーニング店など洗濯業。総合スーパーや百貨店にテナントとして入っている事業者も総合スーパーや百貨店からの要請を受け、提供方法の工夫や提供する製品の工夫など取り組みを求められることがあります。これがファッション業界と直接的に関わる部分ですね。

 前年度の特定プラスチック使用製品の提供量が5トン以上の場合は〝多量提供事業者〟となり、取り組みが著しく不十分な場合は勧告・公表・命令等の対象になる場合があります。命令措置後、命令にも違反した場合は50万円以下の罰金が処せられます。

 自主回収・再資源化の取り組みも重要です。これを促す目的で、事業者が作成した自主回収・再資源化の事業計画が主務大臣に認定されると、認定事業者は廃棄物処理法に基づく業許可がなくても自主回収・再資源化を事業としてできるようになりました。先行事例の一つが神戸市と小売業、メーカー、再資源化事業者19社による取り組み。洗剤など使用済み製品の詰め替えパックをスーパーやドラッグストアなど市内75店に設置した回収ボックスで分別回収し、水平リサイクル(同じ物に生まれ変わらせる)を目指すというものです。自治体が加わることで、同業者も含めて様々な関連事業者が集まり、面的に取り組みを発展させることができます。

日本のプラスチックの再資源化状況(20年)。未利用は14%と少ないが、112万トン。「それらが有効利用されるようにシフトしていきたい」と羽田課長

あらゆる事業者が対象

 この法律はあらゆる事業者が対象です。特に「プラスチック使用製品産業廃棄物等を排出する事業者」というのは、オフィス、店舗、工場などで事業を行う企業であればその多くが対象となります。事業活動に伴って排出されるボールペンやクリアファイル、バインダー、緩衝材などもプラスチック使用製品産業廃棄物等の対象だからです。

 国としては、規制で縛るという意味合いの法律というより、プラスチック製品のライフサイクルに関わるあらゆる主体(企業や自治体、消費者など)に、資源循環のための創意工夫を促したいという狙いで制度設計しています。「廃プラスチックの資源循環高度化事業」(21年度補正予算額46億円)もその一環。製品の環境配慮設計やワンウェープラスチックの使用合理化などに取り組む企業の設備投資を支援するもので、5月から公募をしてまいりました。こうした支援を今後も検討し、主体的に取り組まれる企業の皆さんをバックアップしてサーキュラーエコノミーを実現していくことが大事だと考えています。

(繊研新聞本紙22年6月16日付)

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