ユナイテッドアローズは、8月にサステイナビリティー(持続可能性)の数値目標を公表した。「サーキュラリティ」「カーボンニュートラル」「ヒューマニティ」の3カテゴリーで31年3月までの達成を目指す。同社のサステイナビリティー推進に長年携わってきた玉井菜緒サステイナビリティ推進部部長にこれまでの経緯と数値目標策定の背景を聞いた。
学生時代に環境問題について学び、何かできることがあればやりたいと思っていたんです。ファッションが好きでこの会社に入ったのですが、重松(理現名誉会長)は環境問題について社長時代から従業員一人ひとりに環境問題に関するメッセージを熱心に発信していました。
04年にできた研究開発グループという部署が、環境問題も管轄するということを聞き、手を挙げて異動しました。店長会で節電や紙の使用削減を訴え、環境問題の存在を意識することが、巡り巡って会社がお客様の生活の役に立つということを従業員のみんなに啓発することから始めました。
その後、アースデイに店舗を一部グリーン電力にするとか、マイバッグを使うと1回につき10円を森林保護に寄付するなど、少しずつ店頭での営業活動と一体になった取り組みが増えました。でも、動きが加速したのはSDGs(持続可能な開発目標)とパリ協定が採択された15年以降でしたね。
成文化する以前から当社の経営課題の一つでしたが、この頃からESG(環境・社会・ガバナンス)投資が注目を集め、サステイナビリティーに関連する報道もすごく増えて、世の中の関心が高まった。企業の経営においても、さらに強く求められるようになった。
そこで次期中計の検討期間だった20年3月期にサステイナビリティーについても議論し、21年3月期から新中計をスタートするタイミングで全社推進項目の一つに組み入れ、テーマと重要課題を設定したんです。専属部署のサステイナビリティー推進部も開設しました。
その期から委員会を月1回開いています。環境や人権など様々な課題について議論を重ねた結果、商品の循環、カーボン温室効果ガス削減、自社と取引先の健康や安全など人権という3カテゴリーで当社の取り組みをお客様に訴求することを決めたんです。
数値目標を策定したのは、定量化することが透明性や客観性を担保することになり、従業員や取引先の皆さまにとってもゴールを可視化し、共有するための旗印にもなると考えたからです。今下期(10月~23年3月)からはそれぞれの達成度合いや進捗(しんちょく)を、お客様など全てのステークホルダーに開示します。
長い時間をかけて全社で取り組む風土を醸成したので、最近は店頭で働くメンバーが、サステイナビリティーに関して「もっとこうすべきでは」と、現場ならではの意見やアイデアを挙げてくれることも増えました。異常気象など、サステイナビリティーが他人事ではないという認識は広がっています。この機運をしっかり捉え、経営との両立を目指したいと考えています。