サザビーリーグの「ロンハーマン」は、サステイナビリティー(持続可能性)への取り組みを本格化した。環境へ配慮した事業活動を進め、コミュニティーとの関わりを深めるほか、商品やサービスでサステイナブルな選択肢を提供し、社員の幸福度も高める考えだ。30年までにロンハーマン事業でのCO2(二酸化炭素)排出量実質ゼロを目指すほか、仕入れや在庫コントロール最適化により、23年までに店でのセールを廃止し、プロパー消化率80%など数値面でも具体的な達成目標も掲げる。
19年からサステイナビリティーに事業全体で取り組むべきとの議論を進め、21年から公約を定め、活動を本格化することにした。社内の誰にでもわかりやすいよう「ラブ・フォー・トゥモロー」を合言葉にした「サステナビリティ・ビジョン」を策定した。フォーカスエリアを四つに分け、それぞれに公約を設定。事業運営を進める中で、具体的な数値目標を設定している領域の一つが「環境を守る」だ。
温室効果ガスの排出削減に向け、店舗で使用する電力を再生可能エネルギーに順次切り替えていく。21年には二子玉川、横浜、福岡、京都、神戸の5店に導入し、30年には24店全ての電力を再生可能エネルギーに切り替える予定だ。商業施設内の店舗でもディベロッパーへ再生可能エネルギーに切り替えるよう働きかける考えだ。
店舗照明のLED化も進める。自社所有の建物や社用車などの使用電力見直しも含め省エネを推進。オリジナル商品の生産工場や仕入れブランドの商品配送のプロセスでもCO2削減を図る。使用電力を減らす努力に加え、再生可能な手法を使った自社発電も行う考えだ。千葉県匝瑳市に新設するソーラーシェアリング施設を10月15日から稼働させ、店舗への再生可能エネルギー供給も開始する。
プロパー消化8割へ
仕入れや在庫管理を最適化し、23年までに「ロンハーマン」「RHC」の全店でセールを廃止し、プロパー消化率を80%に高める。20年に一度目の緊急事態宣言が出た際、ロンハーマンでは店舗の3割が休業したが、その後、仕入れを3割減らし、セール開始時期を例年より遅くし、期間も短くしたところ、むしろ粗利率が上がった。
この時の経験からセールは「なくせる」との手応えを得た。プロパー消化で仕入れの8割を売り切り、残り2割はアウトレット4店で消化。アウトレットにおいても消化を急ぐために大きく値下げするのではなく、プロパー店と同様の陳列と接客販売で、過年度在庫以外は値引き率を適正に抑えて売る。
素材も資材も見直す
オリジナル商品に使う素材も25年までに100%サステイナブルなものに切り替える。ロンハーマンのオリジナル商品の8割にはコットンが使われているが、BCI(ベター・コットン・イニシアチブ)、GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)などの認証を得たものか、リサイクルに切り替える。ポリエステル、ナイロンも100%リサイクルに切り替え、ウールやダウンも飼育環境に配慮したものに変える。
資材についても20年から始めたECで使う段ボールを減らすほか、21年度中にショッピングバッグも有料化し、使用量の削減を目指す。有料化で得る代金は環境保護団体に寄付するなど、ショッピングバッグを購入する場合も、その代金が何かしらの貢献につながる形にする考えだ。
根岸由香里ウィメンズディレクターに聞く
「真面目に、明るく、全員で」
小さなころから服が好きだったので、今まで自分の人生をかけてこの仕事をやってきた。でもファッション産業が環境に与える負荷が非常に大きいことを知り、コットンの栽培における劣悪な労働環境に苦しむ人たちのことなどを聞いて、自分の子供に胸を張れない、これは無視できないと思った。
2年くらい前からこの問題について勉強を始め、ロンハーマンの役員の人たちも巻き込んでみんなでサステイナビリティーの重要度について理解を深め、店舗や商品、デザイン、管理など各部署にサステイナビリティーの担当を置き、できることからやるようにしてきた。
社内メールなどでもサステイナビリティーに関する情報や気づきを週2回程度発信するようになった。店頭でもできることを模索していて、横浜の店ではサステイナビリティーの取り組みを1日一つカレンダーに記して、スタッフが毎日それを意識するなど全店に広げたい取り組みも始まっている。
知識や情報が増えることでどんどん行動も広がると思う。でも、これでなきゃいけないって強制しないことも大事だと考えている。気づきのスイッチやタイミングは人によって違うし、窮屈にならないように心がけていないとクリエイティブさが損なわれる。掲げた公約は簡単なものではないけれど、真面目に、そして明るく皆で取り組んでいきたい。
(繊研新聞本紙21年8月30日付)