代表作として手掛ける「エマーユジュエリー」で知られ、ジュエリーアーティストとして日本の宝飾業界で40年以上にわたり第一線で活動を続けてきた。エマーユはフランス語で七宝を意味する工芸品で、梶氏はその収集家でもある。24年12月にそのコレクションから約150点をえりすぐり国立西洋美術館に寄贈。同館で今年開かれた「梶コレクション展・色彩の宝石、エマーユの美」には約16万人が来場した。エマーユとの出合いや、これまでの足跡を聞いた。
オリジナリティーを求めて
――宝飾業界でのキャリアは。
まず、宝石の仕事をするためアメリカに留学してG.I.A(米国宝石学会)の資格を取得。帰国したのが1974年で、翌年に宝石鑑定所を開きました。ちょうど、婚約指輪は給料3カ月分なんていうキャッチコピーがブームとなり、ダイヤモンドが一般的に広がり始めた時期です。それまでは皆さん、ダイヤモンドであるという証明書は出していましたが、加えて品質やグレードを証明する鑑定書が必要とされるようになってきたため、鑑定所も多くの依頼を頂き、とても忙しくしていました。
ただ、仕事は順調でしたが、5~6年も経つと「やっぱり創作がやりたいな」との思いが募ってきました。鑑定は私でなくともできる仕事。特別自分の思いや創作の部分はいりません。それがだんだんさみしくなってきたんですね。また、その頃に日本に入って来るジュエリーというのが、画一的なものばかりだったというのもあります。ヨーロッパの絵画などには様々なジュエリーが描かれているのに、鑑定所で僕らが見るものは20個全て同じという。もっと夢のある良いデザイン、新しいジュエリーを自分が手掛けられればと。そんな思いがデザイナーを志す一つのきっかけとなりました。
――エマーユとの出合いは。
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