靴下の製造過程には、編み上げ後に「セット」という最終工程がある。片足ずつ金属製の型板にはかせ、蒸気と圧力をかけて靴下をきれいな形に整える仕事だ。ニッターからの受注生産となるため、消費者からは遠い存在。縁の下の力持ちとして業界を支えてきたが、昨今の人手不足や燃料コスト上昇などを背景に廃業する工場も少なくない。そうしたなか、靴下の一大産地である奈良県広陵町で、オリジナルブランドの靴下に挑戦しているのが古山靴下仕上工場だ。
(山田太志)
創業60年余りの歴史を持ち、スクールソックスや5本指靴下のセットに強い。主力受注先のニッターからの仕事も現在は比較的安定している。ただ5年先、10年先を見据えれば次の事業の柱作りが不可欠と、三代目の古山智英さん(38)と妻の悠加さんは考えた。とはいえ、最終製品の靴下作りのノウハウはほぼ皆無。地域の中小企業のバックアップを行う広陵高田ビジネスサポートセンター(ココビズ)の助言を得て、約2年前からブランド作りに挑戦した。