【レディス特集】変わり続けるレディス市場 キーワードはサステイナビリティー/デジタル/ライフスタイル

2021/01/29 00:00 更新


「スナイデルホーム」(マッシュスタイルラボ)

 20年はレディス市場も例外なく度重なる新型コロナの感染拡大に翻弄(ほんろう)された年だった。一方、この1年でデビューした主な新ブランドや新ラインをたどると、いくつかの新たな市場傾向が出てきているのが伺える。困難な状況は続くが、市場は絶えず変化を続けている。共通するキーワードとして浮かび上がってきたのは、サステイナビリティー(持続可能性)と、デジタル、ライフスタイル型の三つだ。

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環境への意識 若い世代にも

 まず、サステイナビリティーは、アパレル市場では共通認識になり、消費者にもかなり浸透しているが、レディス市場ではこれまで30代以上を対象にした提案が多かった印象だ。環境に配慮した服作りでは、その生産背景や素材の希少性などでコストがかさみやすく、商品の価格帯に見合った年代が上になりがちのためだ。

 しかし、20代を中心とした世代への発信も少しずつ目立ってきた。背景には、若い世代にも、まずは環境や社会への問題意識を身近に感じてもらおうとの意識がある。

 例に、レディスカジュアル専門店のR1000は20年春にサステイナブルをテーマの一つに掲げたブランドを始めた。狙うのは20~30代の男女だ。オーガニックコットンを使った商品を強化するほか、開発途上国の給食などを支援する非営利活動法人「テーブルフォーツー」と組んで、プリントTシャツやエコバッグの販売もする。

 二つ目に、市場ではデジタル活用も急速に進んでいる。「クリーコンフォルト」(バロックジャパンリミテッド)はデータを基点にした商品企画や店舗設計などに挑む。トレンド商品や人気商品などを、自社の店頭やECの売れ筋データと、サードパーティー(第三者)のデータで解析する。

 この間、盛り上がりをみせるDtoC(メーカー直販)にも注目だ。「ソウフォーユー」(キャン)は20年春にレディスカジュアルブランド「エヘカソポ」の派生ブランドとしてデビュー、モデルの橋下美好さんがプロデュースする。年間売り上げは1億円を見込み、今後も同社はDtoC型ブランドの開発を強化する考えだ。

「クリーコンフォルト」(バロックジャパンリミテッド)
「ソウフォーユー」(キャン)

ぶれない軸と柔軟な発想で

 三つ目に、ライフスタイルへの関心も広がっている。服を生活を彩るものの一つと捉え、消費者の生活に寄り添った商品企画やブランドイメージを発信する流れは、この数年のトレンドだ。コロナ下で家ナカ需要が増え、より一層注目度が高まっている。

 新型コロナによる消費の冷え込みでアパレル不振に拍車がかかったとの見方も多いが、ホームウェアといった新定番が生まれたように、視点を柔軟にすれば、潜在需要はまだありそうだ。消費傾向として商品や企業、ブランドに価値を感じられるもの、共感を得られるものの購買が増えているため、ぶれない軸は必要だが、強みと新たな発想をかけあわせれば、可能性はまだ導き出せるのではないだろうか。

「ル・フォワイエ」(エレメントルール)

新定番、ホームウェア続々

 20年秋以降に次々とデビューしたホームウェア軸のブランド、ラインは今後、市場で定番となりそうだ。コロナ下で消費者の関心が〝おうち時間〟の快適な過ごし方に向き、そのなかで女性はコスメなど自分磨きのための商品への投資が高まった。

 そうした時流を捉え、近所へのお出かけにも着られるファッション性や気分が高揚する色柄、美容成分を配合した素材を売りにしたウェアや、雑貨の販売に各社が力を入れている。 

 例えば、「スナイデルホーム」(マッシュスタイルラボ)は、ローズヒップなど美容成分を配合した素材を使い、女性らしい色柄、ドレープなどで作る美しいシルエットを特徴にする。「ビサージュ」(ジュン)も21年春夏物では美容効果に注目、コラーゲン加工したパイルニットのカーディガンを作った。

 ほとんどのブランドが20代後半~30代をターゲットにしているが、大人市場を狙った提案も出てきている。「エジック」(エレメントルール)が21年3月から始めるルームウェアの新ライン「エジックホーム」は、ブランドがコンセプトにするモノトーンのテイストで統一する。

 商品はスナイデルホームが21年春向けでウォータープルーフのスピーカーなども提案、ギフト需要にも訴求する。このほか、ジュンでは21年4月に「ビオトープ」で新たなランジェリーライン「ヨー・ビオトープ・ランジェリー」を始めるなど幅も広がっている。今後の動向にも注目だ。

「スナイデルホーム」(マッシュスタイルラボ)
「ビサージュ」(ジュン)
「ラグナムーン・ホーム」(マークスタイラー)


デジタル活用の取り組み事例

 コロナ下での巣ごもり需要の高まりも背景に、デジタル技術の活用が一層促進されている。実店舗に足を運ぶことが困難ななかでLINEやSNSを使った接客を充実させたり、CGサンプルを使った商品企画をしたりするなどの例が見られる。

◆CG活用の協業商品(マークスタイラー「ジュエティ」)

 マークスタイラーは「ジュエティ」で20年11月、DtoC(メーカー直販)事業などを手掛けるグッドバイブスオンリー(東京)と協業した商品を販売した。コロナ下で消費が多様化するなか、「新たな取り組みを積極的にするブランドイメージを確立する」狙い。 

 将来的な物作りの効率化や、CGを使った受発注による過剰供給と在庫リスク削減の実現を見据えた。商品はロンT(5000円)やウエスタンのディテールを取り込んだドレス(9000円)などがあり、計800枚、500万円を売り上げた。ほぼ正価で消化したという。ブランドの公式インスタグラムで発売前にCG動画で取り組みを拡散できたことが結果につながった。

 実際に販売し、「CGサンプルを活用した予約実施と生産工程の効率化は想定よりも精巧で高評価をもらえた」と振り返る。今回は話題性も狙って短期間で企画したが、次回の21~22年秋冬は準備を綿密にし、仮想空間でのファッションショーを実現したいと考える。

ロンTやフーディーなどを販売した

◆LINEやSNS使い店舗と連携(ベイクルーズグループ「スピック&スパン」)

 ベイクルーズグループの「スピック&スパン」はSNSでの情報発信をEC、店舗と連携させた販促を強化している。利便性を高めるサービスとして、LINEの活用もスタートした。

 インスタグラムでは、写真やライブ配信だけでなくおすすめ商品の接客動画の投稿を始めた。実際に手に取らないとわからない肌触りやサイズ感、コーディネートの仕方をファッションアドバイザーとしての経歴があるスタッフが、1分程度の短い動画の中で紹介している。商品ごとになっていて、短時間で見やすいことが好評の理由だ。また、ECの特集とインスタグラム、店舗のレイアウトを連動した打ち出しも実施し、来店のきっかけにもなっている。

 20年11月から、店舗でLINEを使った入荷連絡システムを導入した。店舗でipad上に表示されたQRコードを読み取って友達登録すると、商品が入荷した際に通知が来る。一度登録すれば、LINE上でいつでも簡単に入荷連絡を受け付けられるようになるため既にリピーターも多い。

デジタルカレンダーで1カ月先の入荷商品もわかりやすく案内が出来る

◆LINEワークス導入 EC、顧客売り上げ増(トウキョウベース)

 トウキョウベースは、ワークスモバイルジャパンが提供するビジネス版メッセージアプリ「LINEワークス」を活用し、客が実店舗に足を運びづらいコロナ下において成果を上げている。EC売上高や顧客売上高の増収、販売員の負担軽減に寄与している。

 同アプリの導入は18年9月。以前から販売員用に社用スマートフォンを配布し、LINEを活用した接客を実践していた。しかし、顧客情報の管理や販売員と顧客のコミュニケーションチェック、販売員の業務煩雑化などに課題を感じていたといい、同アプリの導入以降、こうした課題が解消されたという。

 現在は社内基準をクリアした一部の販売員のみにLINEワークスを活用した顧客とのコミュニケーションを認めている。新規デジタルツールの導入で大きな効果を出すためには、優秀な販売員による顧客の信頼獲得が欠かせないと考えているためだ。

 20年4月には、自社ECと同アプリを連携した。販売員がECのURLを同アプリを通じて顧客に送り、それが購入につながった場合は、当該販売員の売り上げとして計上できるようになった。20年4~5月は実店舗を休業していたが、EC売上高は前年同期比3倍になった。うち同アプリ経由の売り上げは2割を占めた。

 顧客来店時の購入品や金額などの情報もスマートフォンから簡単に入力できるようにした。販売員が連絡した日時などの情報も同期されており、管理者がこうした情報をもとに販売員に接客のアドバイスをすることも可能になった。顧客情報管理の精度が高まり、20年6~9月の「ステュディオス」業態のレディス分野の顧客売上高は2.2倍になった。

LINEワークス上での販売員と顧客の会話イメージ

(繊研新聞本紙21年1月25日付)

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