ようやく朝夕が冷え込むようになり、うっとうしかったセミの声もいつの間にか静かになった。東京郊外の田んぼでは慌ただしく稲刈りを終え、稲架(はさ)掛けの時期を迎えている。秋の長雨が終わり、澄んだ青空の下で黄金色の稲を束ね干す。そんな風景に季節の移り変わりを実感する。
いよいよ10月、衣替えの季節。衣替えは、もともとは中国の宮廷で始まった習慣が平安時代に日本に伝わったとされる。今では、季節に応じて学生や企業の制服を変更する習慣となった。多くの地域で、毎年6月1日と10月1日に一斉に衣替えが行われる。
制服を着ていたはるか昔のことを思い返すと、懐かしさとともにどこか身が引き締まる。夏服だと白いカッターシャツの糊(のり)付けされてぱりっとした襟元、冬服だと学ランの襟カラーのひんやりとした白いプラスチックが、季節の移り変わりを感じさせてくれた。制服を着なくなった今、生徒たちの純粋な志や自立心の芽生えが、制服のもつストイックな雰囲気と重なって見える。
衣替えと時期を同じくして、全国で緊急事態宣言などが解除される。息苦しかった生活から解放され、日常生活の再開に心躍る人も多いだろう。コロナ禍でのリモート生活から切り替わり、制服姿の生徒たちの姿を見る機会も増えるかもしれない。新しい季節に、襟を正して臨みたい。