政府はサプライチェーンでの企業の人権対策を強化するため、今夏までに人権デュー・ディリジェンス(人権DD、企業活動における人権への負の影響を特定し、予防・軽減させ、情報発信すること)に関するガイドラインを策定する。経済産業省が検討会を立ち上げ、素案を作る。
これは古くて新しい課題だ。国連は11年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を作り、各国政府に実施を促す行動計画を要請。日本は遅ればせながら、20年10月に行動計画を作った。
ガイドライン策定は政府が行動計画のフォローアップとして昨秋、企業にアンケート調査し、「人権DDに関してどう対応してよいのかわからず、指針がほしいとの要望が多かった」(萩生田光一経産相)ことに対応するもの。既に繊維業界では日本繊維産業連盟が国際労働機関と連携して業界独自の指針策定作業を進めているが、新設する検討会でのガイドラインは「各業種の共通課題に対応した業種横断型」(経産省)となる。
指針の策定にあたり、重要なのはわかりやすさと産業界への周知の徹底だ。人権対策の重要性を認識し、行動する大企業は多い半面、中小企業では浸透していない。企業が人権対策を強化するメリットをしっかり伝え、補助金申請の加点措置など支援策も必要。ガイドラインを作った後の対応が重要だ。