《めてみみ》耳付きジーンズ

2022/12/20 06:24 更新


 セルビッジとは生地端のほつれ止めのことで「耳」とも言う。70年代まで主流だった幅の狭いデニムを耳まで使う耳付きジーンズは「リーバイス501」が筆頭だった。耳は身生地と収縮率が違い、洗濯を繰り返すとパッカリングが起き、染めムラの多い生地と相まって独特の色落ちをした。

 当時の生産技術の限界から生まれた偶然の経年変化は、主に日本で愛好された。80年代後半に広幅の生地が量産され、耳付きジーンズが市場から姿を消すと、往時の風合いの再現を試みるブランドが現れた。

 日本生まれの耳付きジーンズは90年代にブームになり、欧米にも飛び火した。裾を折り返して耳をのぞかせる着こなしは定番となった。

 今や大手SPA(製造小売業)も耳付きジーンズを売っている。ただ、近代化された最新の生産設備で作ったそれらの多くは、はき込んでも昔の501のようには色落ちはしない。一方、織り糸、染め方、織機、ミシンまで当時と同じやり方や設備で作った専業ブランドのものはそれに近い色落ちの再現度が高い。

 前者は1本4000円程度、後者は2万~3万円はする。販売量ならSPAだが、専業ブランドの高いジーンズにも根強いファンはいる。低効率な昔と同じ方法や設備でわざわざ作るジーンズにも、価格に見合う価値があると評価されているからだろう。



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