物価の上昇に賃金が追い付かない。22年11月の毎月勤労統計調査では、物価上昇を加味した実質賃金が前年同月比3.8%の減。8カ月連続のマイナスだ。今後インフレに見合う賃上げができる企業とできない企業とでは人材の確保・維持で差が付きそうだ。
八木通商の八木雄三社長は「社全体として賃上げは必要」としながらも、「同一労働同一賃金の考え方ではなく、同一効率同一賃金であるべき」と話す。すでに能力に応じた給与体系であり、社員間の給与に「大きな差が付いている」という。「ジョブ型雇用は当たり前」としてヘッドハンティングなどで人材を確保する一方、新卒採用も重視し、両輪で人材基盤を厚くする。
ある繊維専門商社の幹部は「若い層の人材流出が止まらない。この10年では採用人数よりも辞めた人数の方が多い」と頭を抱える。
蝶理は、産地企業などの協力を得て、北陸など物作りの現場での若手研修に力を入れている。「コロナ下でこうした研修ができていなかった」との思いからだ。アパレルOEM(相手先ブランドによる生産)の営業では、外部人材の活用も始めた。
優秀な人材が、「入りたい」と思う産業でなければ発展は望めない。日々の仕事を魅力的なものにし、自信を持ってその魅力を語れるようになることが遠回りに見えて近道の気がする。