タイで下院総選挙が行われ革新系の野党「前進党」が第1党に躍進した。選挙に強いタクシン元首相派の最大野党「貢献党」が有利と見られていただけに番狂わせが起きた。14年に軍事クーデターを起こし、その後首相に就いたプラユット氏率いる与党は大敗した。
前進党のピタ党首は42歳と若い。徴兵制の廃止やタブー視されている王室批判を封じ込める不敬罪の改正、国軍の改革などを公約に掲げ、タイ式ではなく、「〝本当〟の民主主義の国になろう」と国民に呼びかけた。
タイでは1932年の立憲君主制移行後、改革派の躍進や政局が混乱するたびにクーデターが起こり、軍の政治介入が続く。現政権もそうだ。32年以降、19回もクーデターが起き、タイ式の民主主義が続いてきた。
今後の焦点は前進党と貢献党など野党が連携してピタ氏を首相に選任し、連立政権を樹立できるかだ。しかし簡単ではない。首相になるには上院、下院合わせて376議席が必要で、野党が連合しても数十議席及ばない。首相に任命されても、再びクーデターなどにより覆される恐れもある。
タイには繊維関連含め多くの日系企業が進出し、「着実な経済発展には政治的安定は欠かせない」と口を揃える。クーデターなど混乱が再び起きないこと、タイの民主化が今度こそ前に進むことを期待したい。