東レの大矢光雄副社長の社長就任が決まった。6月末の株主総会を経て正式に決定する。大矢さんは繊維営業一筋で、ファイバー、テキスタイルのほか、東レインターナショナル社長として縫製品ビジネスにも携わった。
これで日本化学繊維協会の会長・副会長を持ち回りしている7社のうち5社(帝人、東洋紡、東レ、クラレ、旭化成)が繊維出身あるいは繊維を経験した社長になる。
繊維の事業規模は東レが約1兆円で全社売上高に占める割合は40%と突出し、次いで帝人が3000億円強で32%。合繊メーカーといっても、事業の主力は樹脂、フィルム、医薬など非繊維という企業がほとんどだ。そんななかで繊維出身社長がこれだけ多く占めるのは、異例と言っていいだろう。
「偶然重なっただけ」(大手商社トップ)との見方もあるが、繊維の現場は他の事業と比べて営業力や開発力が鍛えられると指摘する人は多い。社長に限らず、非繊維事業の幹部を繊維から輩出するケースも目立つ。
かつて世界をけん引した日本の合繊産業も量的に見れば今では世界シェア1%を割り込んでいる。しかし人工透析に使われる血液ろ過フィルター、浄水器のような水処理分野などいずれも繊維のノウハウで生まれたもの。こうした新事業創出も含め、繊維出身社長のリーダーシップに期待したい。