この秋、ある団体旅行に行った。城巡りや街の散策など、結構な距離を歩くことが事前に予想されたツアー。両足に障害のある2人の若い女性が参加していた。両腕をロフストランド杖で支えながら歩く。
まだ暑気が残るなか、急な坂になると、荷物を持ち替えたり、少し歩き方を変えたり。様々に工夫しながら着実に前に進む。若い女性らしく、しばしば立ち止まっては、インスタグラムに上げるための写真撮影にも余念がない。うまく撮れた、駄目、もう1枚と、本当に楽しげだ。
一方、しっかりと時間を管理して行程をこなさねばならない添乗員は大変である。彼女たちに一定気を使いながらも、団体として効率的に動かさねばならない。直接的な言葉はないが、「撮影時間は1分だけですよ」などと、何度も時計を見ながら繰り返す。
記者も第一印象は「なかなか大変だなあ」というだけの感。それでも楽しげに写真を撮る彼女らの姿を見ていて、ふと気づいた。自分は貴重な人生を本当に楽しんでいるだろうか、つまらぬことで不平ばかり言ってはいないか。物理的に彼女らをヘルプすることもあったが、実は自分の方が多くを教えられた気がする。業界でも多様性という言葉がよく使われるようになってきたが、その意味をきちんと理解していたのか、恥ずかしながら還暦を前に自問した。