「アシタワアタタカクナルミタイデスヨ」――突然発せられた言葉の意味が理解できず、まして自分に投げかけられているとは思いもしなくて一瞬、戸惑った。ある地方都市に出張した際、コンビニで弁当を温めてもらっている最中の出来事だ。温め終わるのを待つ間、店員さんが何げない会話を投げかけてくれた。「明日は暖かくなる」と意味を解し、あわてて「今日は寒かったですから、うれしいですね」と言葉をつないだ。
コンビニでは最低限の要件以外、言葉を交わさないという暗黙のルールがあるものと思い込んでいた。特に都会で生活をしているとそうで、コンビニに限らず、なじみではない飲食店、電車の中などで知らない人と言葉を交わすことはほぼない。
以前、米国に行った際、ホテルのエレベーターで乗り合わせた人が話しかけてきて驚いた。観察していると、色んな場面で知らない人同士が会話しており、「その洋服とても素敵ね」なんて言葉も聞こえてきた。多様な人種で構成された国だからか、互いに敵意がないことを示すためにこうしたスモールトークが交わされるのだとか。
世界では「分断」が深刻になっているが、今も米国でスモールトークは健在なのだろうか。洋服店では店員さんから声をかけられるのを避けたいと思っている私だが、たまには会話を楽しんでみたいと思った。